望月優大のブログ

見えているものを見えるようにする。

すべての家族は家族ごっこ。是枝裕和『万引き家族』を観て

『万引き家族』を観た。話題の映画なので、前置きはせずに書きたいことだけを書いておこうと思う。 この映画では「偽物の家族」のことが描かれている。今風の言葉で言えば「フェイクな家族」とでもなるだろうか。それには2つの意味があって、「血」が繋がっ…

映画評『ラッカは静かに虐殺されている』

試写で『ラッカは静かに虐殺されている』(原題:CITY OF GHOSTS)を観た。一般公開は4/14からとのことだ。観た方が良い。 映画の邦題「ラッカは静かに虐殺されている」は、ISの首都となったシリアの都市ラッカの状況を発信する市民グループの名前「Raqqa is…

僕が『複雑』に込めたもの。日本の移民文化・移民事情を伝えるウェブマガジン「ニッポン複雑紀行」をはじめます

こんにちは。望月優大です。今日12月1日は私の独立以外にもう一つお伝えしたいニュースがあります。色々重ねすぎて最近はあまり寝れませんでした・・・笑 なお、独立についてはこちらにまとめていますのでぜひご覧になってみてください。 ニュースというのは…

スマートニュースを卒業します。独立してコモンセンスという会社をつくります

こんにちは。望月優大です。ご報告があり、少し長めのブログを書いていきます。 (Photo by 松岡宗嗣) スマートニュースを卒業します。 私は2017年11月末をもって、2014年から3年強在籍させていただいたスマートニュース株式会社を卒業し、12月1日に小さな…

本気で一つの始まりに賭けてみた話。スタディクーポンのこと。自分のこと。相談を受けてから、これまで。

こんにちは。望月です。今日、仲間とともに一つの新しいことを始めました。そのことについて、少し長めの文章を書きます。 新しいことの名前。 スタディクーポン・イニシアティブと言います。 親の所得が低くて、塾に通うことができない。高校受験の準備に全…

『アメリカを動かす「ホワイト・ワーキング・クラス」という人々』(ジョーン・C・ウィリアムズ)

とても面白く読んだ。著者はアメリカ人全体を所得でざっくり3つに分類する。エリート、ワーキングクラス、貧困層、この3つ。 基本的に彼女が話しているのは階級(class)や階級文化(class culture)のことで、ワーキングクラス(白人が多い)の状況とそれに…

3つの薬物中毒に侵された街(『ローサは密告された』ブリランテ・メンドーサ)

もしまだ観ていなかったらこの映画を観てほしい。きっと圧倒されるはずだから。 ブリランテ・メンドーサ監督の『ローサは密告された』はフィリピンの日常に深く根付いた麻薬と人々との関わりを描く。登場人物がすべて実在するかのように感じられるほどにリア…

私は植松のように考えない。他人を不幸にしたからと言って殺されて良い人間などいない。

今日、7月26日で相模原障害者施設殺傷事件から丸1年になる。 障害者「幸せ奪う存在」=トランプ氏演説契機に-手紙で植松被告・相模原施設襲撃:時事ドットコム 【独自】45人殺傷、植松被告からの手紙|日テレNEWS24 最近になって植松聖被告からマスコミ…

「投票率がとても低い」ということについて

こちらの記事を読んで。 マクロン新党の勝利の意味 | 鈴木一人 | コラム | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト 6月に行われたフランス国民議会選挙の最大の特徴は投票率の低さであった。投票率は42.6%で、1958年に始まったフランス第五共和政で最低…

『人生の全てがゼロになる「クリティカルポイント」で、私は難民支援協会に出会った。』

昨日6月20日は「世界難民の日」でした。普段から応援している難民支援協会(JAR = Japan Association for Refugees ※読み方は「ジャー」)というNPOのスペシャルイベントがあり、会場提供のサポートを行いました。 Refugee Talk-難民を学ぶ夕べ*世界難民の…

書評『分解するイギリス』(近藤康史)

イギリス政治の専門家によるイギリス政治入門の書。本質的な内容がわかりやすくまとめられており、大変勉強になった。イギリス政治の理解に役立つだけでなく、長らくイギリスを目標に政治改革を行ってきた日本政治を考えるうえでも必読の一冊だ。なぜなら、…

バーナンキが日本に推奨する「財政政策と金融政策の連携」の意味

アメリカの前FRB議長ベン・バーナンキが5月24日に日本の金融政策について語った内容が翻訳されて話題になっていた。 ベン・バーナンキ「日本の金融政策に関する考察」 – 道草 とても興味深い内容なのだが、日本語訳で1.5万字以上あるということと、専門性が…

書評『ユマニチュード入門』

読まねば読まねばと思っていたこの本、ようやく読むことができた。フランスで看護・介護の分野に関わり、「ユマニチュード Humanitude」という技法、そして哲学を生み出したイヴ・ジネスト氏とロゼット・マレスコッティ氏による本である。日本への紹介者であ…

自己責任を求める成功者たちにつけるクスリ

本田圭佑氏のツイートが話題になっていた。若い世代の自殺に関するニュースを取り上げて「他人のせいにするな!政治のせいにするな!!」と吼えている。ああ、このツイートは見たくなかった。好きなサッカー選手であるだけに個人的には残念な気持ちになった…

日本のシングルマザーたちを苦しめる恥やスティグマの感覚

米ワシントンポスト紙が日本のシングルマザーたちの苦境を取り上げる記事を出していた。単に貧困率など数値的な側面を取り上げるだけでなく、「恥」や「スティグマ」といった心理的な側面に焦点を当てているパートが印象的だったので、そこだけさっと翻訳し…

鈴木謙介氏の整理に沿ってーー経産省「次官・若手ペーパー」論(3)

社会学者の鈴木謙介氏が件のペーパーをもとに始まった議論に対してある種の総括(?)的なブログ記事を書かれていた。鈴木氏のことは昔から尊敬しており、過去に氏の著作のいくつかを読んできたのはもちろんのこと、講演を聞きにいったこともある。記事中で私の…

経産省「次官・若手ペーパー」に対するある一つの「擬似的な批判」をめぐって

先日こちらのエントリを書いたところかなり大きな反響があった。 その後、件の「次官・若手ペーパー」に対する応答が他所からもいくつかなされていたが、そのなかに渡瀬裕哉氏という方によるかなり強めの批判記事があった。この方のことは存じ上げなかったが…

経産省「次官・若手ペーパー」に対する元同僚からの応答

経済産業省の「次官・若手プロジェクト」によるペーパーが話題になっていた。私自身、新卒時に同省で働いていたのだが、このペーパーの作成に私の(個人的に親しい)同期なども関わっているようだ。 不安な個人、立ちすくむ国家 〜モデル無き時代をどう前向…

国連軍がムクウェゲ医師に対する24時間の人身保護を再開(英→日翻訳 ※昨日の続き)

良いニュースです。昨日、コンゴのムクウェゲ医師に対する国連軍による保護が解除されており、それによって彼の身に危険が迫っているというブログを書きました。 今日、その保護が回復されているとMONUSCO(国連コンゴ民主共和国安定化ミッション)自身から…

(続報あり)「ムクウェゲ医師への保護はなくなり、彼の命は危険にさらされている」(仏→日翻訳、署名)

こちらの記事で取り上げたムクウェゲ医師の身が現在進行形で深刻な危険にさらされているようです。ノーベル賞候補にも度々あがっている偉大な人物の命がすぐに失われてしまうかもしれないという状況です。 国連軍による彼の人身保護が何らかの理由で停止され…

ケン・ローチ『わたしは、ダニエル・ブレイク』をすべての人に観てほしい。

ケン・ローチ監督の『わたしは、ダニエル・ブレイク』(I, Daniel Blake)を二度観た。一度目は公開直後に。二度目はつい先ほど。感じたことを書いていく。 「人生は変えられる。隣の誰かを助けるだけで。」「涙と感動の最高傑作」 こうした言葉には違和感を…

子どもをひとりぼっちにしない。「子どもの孤立」を知り直すということ。

いまの仕事を通じて支援しているPIECESというNPOがあります。一言でいうと激プッシュしています。推しています。 彼らの活動には捉えがたい素晴らしさ、この時代と呼応した価値があるのですが、出会ったときからその捉えがたさ、名状しがたさをどう言葉にす…

上野千鶴子氏の発言を読んで思ったこと。

上野千鶴子氏の中日新聞紙上での発言が話題になっていました。炎上と言ってよいかと思います。上野氏の発言はこちらで全文読むことができます。Togetterもできていました。 この国のかたち 3人の論者に聞く|考える広場|朝夕刊|中日新聞プラス 上野千鶴子…

私たちは私たちの(無)関心とどう付き合うか。ムクウェゲ医師と『女を修理する男』上映会の記録。

先日『女を修理する男』という映画の上映会を開催しました。日本国内で難民支援の活動をしている難民支援協会さんとWELgeeさんと一緒に企画したこの上映会、当日は100名ほどの方にお越しいただくことができました。学生、社会人、メディアや大学、NPO関係の…

米大統領令による入国禁止措置についてのロイター世論調査の詳細

ロイターによる外国人や難民の入国に関する大統領令についての世論調査結果が話題になっている。 入国禁止49%賛成 反対41%を上回る 米世論調査:朝日新聞デジタル 世論調査を行ったロイター自身の情報を見たほうが良いと思ったのだが、日本語記事が見…

ワシントン州司法長官が信教の自由を保障する憲法修正第一条を巡ってトランプ大統領らを提訴へ「法廷では最大の声よりも憲法が勝る」

大きなニュースが飛び込んできた。 全米初、大統領を提訴へ=入国禁止令は「違憲」-ワシントン州:時事ドットコム 米西部ワシントン州のファーガソン司法長官は30日、トランプ大統領や国土安全保障省などを相手取り、難民やイスラム圏7カ国の出身者らの…

私たちが寛容であるためのヒント。映画『みんなの学校』上映会の前に。

2月17日の夜に『みんなの学校』という大阪市立大空小学校を舞台にしたドキュメンタリー映画の上映会をします。 この上映会は、私が取り組んでいる社会貢献プログラム(SmartNews ATLAS Program)の一環である「社会の子ども」というイベントの第3回です。当…

全訳:ドナルド・トランプ「厳格な審査に関する最近の大統領令についての声明」

トランプ大統領がつい先ほど1/29 18:16(日本時間1/30 8:16)にFacebookで出した声明を全訳した。Donald J. Trump - Statement Regarding Recent Executive... | Facebook この記事の内容は以下の通り。 全訳:「厳格な審査に関する最近の大統領令についての…

難民受け入れ等に関するトランプ米大統領令「米国への外国人テロリストの入国から国民を保護する」について

1/27日金曜日に署名された米大統領令について情報を整理しておきたい。トランプ大統領の就任以降、毎日のように大統領令が出されているが、その一つについてである。 シリア難民の受け入れ停止やシリアを始めとする7カ国の人々に対するビザの発給停止など様…

「本当に困っているのは誰か?」と問う正義。大西連さんと「保護なめんな」ジャンパー問題について話したこと。

1/17に小田原市の「保護なめんなジャンパー」問題が発覚してから1週間。このテーマについてもやいの大西連さんと話したいと思い、一昨日の晩にお会いしてFacebook Liveで1時間半ほど話しました。 大西さんはNPO法人もやいの代表で、名著『すぐそばにある「…