望月優大のブログ

見えているものを見えるようにする。

書評『分解するイギリス』(近藤康史)

イギリス政治の専門家によるイギリス政治入門の書。本質的な内容がわかりやすくまとめられており、大変勉強になった。イギリス政治の理解に役立つだけでなく、長らくイギリスを目標に政治改革を行ってきた日本政治を考えるうえでも必読の一冊だ。なぜなら、…

書評『ユマニチュード入門』

読まねば読まねばと思っていたこの本、ようやく読むことができた。フランスで看護・介護の分野に関わり、「ユマニチュード Humanitude」という技法、そして哲学を生み出したイヴ・ジネスト氏とロゼット・マレスコッティ氏による本である。日本への紹介者であ…

家族主義的福祉からの脱出。17年前にエスピン=アンデルセンが日本について語ったこと。

イエスタ・エスピン=アンデルセンという福祉国家論(正確には福祉レジーム論)の大家がいる。デンマーク人の学者で、20世紀の福祉レジームを「社会民主主義的」(北欧諸国等)、「保守主義的」(ヨーロッパ大陸諸国等)、「自由主義的」(アングロ・サク…

自分の頭で安全保障を考える。井上達夫『憲法の涙』を読んで。

憲法が注目を集めている。直接的には、現政権による憲法九条の解釈改憲とそれに対する国会前デモを含む広範な批判、そして来る参院選の結果如何では自民党が視野に入れる憲法改正の現実味がいや増すという状況がある。 さて、いわゆる安保法制への批判の文脈…

根本的で、予期できなかった出来事の証人。5回目の3.11に寄せて。

2016年3月1日仕事から家に帰ってテレビをつけると、5年前に現地で津波を経験し、いまだその苦しみと付き合い続けている青年についての特集が流れていた。雁部那由多さん、いま高校1年生で当時は小学校5年生。そのとき自分が遭遇してしまった経験を自分以…

書評『数学する身体』(森田真生 著)

森田さんが本を書いた。1985年生まれ、30歳の年である。 数学する身体 作者: 森田真生 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 2015/10/19 メディア: 単行本 この商品を含むブログを見る 森田さんは独立研究者。研究者と聞いて思い浮かべる範囲を大きくはみ出た活…

"正統と異端" の理論的エッセンス

西洋中世史家、堀米庸三先生の『正統と異端』を読んでいてこれはブログにメモしておきたいと思った部分があったのでご紹介します。 中世ヨーロッパのキリスト教の話をしながら堀米先生が抽出する "正統と異端" についての理論的エッセンスは、切れ味が鋭すぎ…

宇野重規『民主主義のつくり方』を読んだ

民主主義のつくり方 (筑摩選書) 作者: 宇野重規 出版社/メーカー: 筑摩書房 発売日: 2013/10/15 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (19件) を見る プラグマティズムから民主主義を考える トクヴィル研究者の宇野先生による、プラグマティズムを強く参照…

大竹弘二+國分功一郎『統治新論』を読んだ

民主主義の意味を再考させる良書 統治新論 民主主義のマネジメント (atプラス叢書) 作者: 大竹弘二,國分功一郎 出版社/メーカー: 太田出版 発売日: 2015/01/24 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (1件) を見る シュミット研究者の大竹先生と、スピノザ…

池内恵『イスラーム国の衝撃』を読んだ

Facebookで日々迫力ある投稿をされている池内恵先生の新著。イスラーム国だけでなく、アル=カーイダに連なるグローバル・ジハードの系譜も含めてわかりやすく整理されており、今読むべき本だと思います。おすすめします。 イスラーム国の衝撃 (文春新書) 作…