HIROKIM BLOG / 望月優大の日記

見えているものを見えるようにする。

金子良事『日本の賃金を歴史から考える』を読んで。

金子良事『日本の賃金を歴史から考える』を読了。評判通り非常に勉強になった。 

日本の賃金を歴史から考える

日本の賃金を歴史から考える

 

現在の社会不安が語られる際には、労働の外にあったり、労働を支えたりする社会保障、社会福祉の領域に焦点が当たることが多いけれど、労働の対価たる「賃金」がいまどうなっているかということを歴史的な布置の中において理解することもとても大切で。

逆に言えば、農村のセーフティネット機能と男性正社員モデルの両方が崩壊した後の時代に、個々人の生活を長期的に支えることができる雇用・賃金の仕組みが出来上がっていないことが、社会保障への大きな期待と、結果としてそれに応えることができない国家への不満を招いている。

気を緩めると徐々に落ちていく「降格する貧困」の裏側には、賃金を通じて生活を安定化していくという考え方自体の社会的な挫折があり、それを放置したままより多くの人を労働に駆り立てても、不安定な労働者を増やすだけで物事の本質的な解決にはつながらないのではないかという危惧を強くした。

いずれにせよ、日本の雇用を歴史的な文脈に置いて理解するには必読の一冊。

本書推薦の読書リストからメモ

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プロフィール

望月優大(もちづきひろき) 

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慶應義塾大学法学部政治学科、東京大学大学院総合文化研究科修士課程修了(ミシェル・フーコーの統治性論/新自由主義論)。経済産業省、Googleなどを経て、現在はIT企業でNPO支援等を担当。関心領域は社会問題、社会政策、政治文化、民主主義など。趣味はカレー、ヒップホップ、山登り。1985年埼玉県生まれ。
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