子どもをひとりぼっちにしない。「子どもの孤立」を知り直すということ。
いまの仕事を通じて支援しているPIECESというNPOがあります。一言でいうと激プッシュしています。推しています。
彼らの活動には捉えがたい素晴らしさ、この時代と呼応した価値があるのですが、出会ったときからその捉えがたさ、名状しがたさをどう言葉にするか、悩んでいました。
その悩みをそのままに書いたというか、考える過程を記したのがこの記事です。
こんな感じで始まります。
PIECESは児童精神科医の小澤いぶきさんが代表を務めるNPOで、虐待や貧困といった問題を抱える子どもたちに寄り添い、そうした子どもたちが普段の生活ではなかなか得ることができない「大人との信頼感を伴った継続的な関係性」を一つずつ構築しようとしています。
PIECESのメンバーに聞くと、その関係性は「家族」でも「友だち」でもなく、そして「先生」でも「アドバイザー」でもない。いま存在する言葉ではなかなか表現しづらい関係性だけれど、この関係性こそが、子どもたちが自分の困難とうまく付き合って生きていくために必要であるような、そういう関係性。いまはうんうん唸りながらも「伴走者」という言葉をひねり出して使ったりしているようです。
この「伴走者」が子どもと一緒に何をするかといえば、日常のたわいもない話をすること、スポーツや料理をしたり遊びに行ったりすること、勉強や恋愛の相談に乗ること、そして、こうした積み重ねを通じて困ったときに相談してもらえる関係性をつくること。困ったことというのは、勉強や恋愛のことかもしれないし、いじめのことかもしれない。妊娠のこと、親からの虐待のことなのかもしれない。自傷のこと、学校に行けないこと、家に居場所がないことかもしれません。
こうした困難に直面したとき、心を許して相談できる関係性がどんな子どもにもあるわけではありません。そして、たくさんの子どもがそうした関係性を持てないことによって、袋小路(と感じられる状況)から抜け出すことが難しくなっています。
この文章を書いたあとも、彼らと何度も何度も話をしました。そうしてようやっとたどり着いた場所がありました。いま思えば当たり前のアイデアです。でもはっとする何かがありました。それが、彼らが取り組んでいる課題の特定であり、その課題を「子どもの孤立」と名付ける、それがひとつのきっかけになりました。
この言葉が取り立てて新しい言葉であるということではありません。インターネットで検索すればそういったテーマについて書かれた文章はたくさん見つかります。
ただ、ともすれば「子どもの貧困」という言葉が人口に広く膾炙していくなかで、少し見えづらくなっていたこと、概念として掴みづらくなっていた何かがあったのかもしれません。
言葉と言葉を対比することで何かが浮かび上がってくることがあります。そして自分が当然に知っていたであろうことを改めて知り直すということがあります。「子どもの孤立」という言葉を通じて自分はそういう体験をしたような気がしています。
子どもたちは家庭や学校、地域というある種の閉ざされた空間を生きています。そこで孤立するということは、経済的なそれを含むあらゆる困難からの脱出を難しくします。
思い出してみてください。誰もが知っているはずのあの孤立の味です。少しずつ味が違うかもしれないけれど、知らない人はいないはずです。その孤立の中に閉じ込められている子どもたちがいます。
自分ですっくとたってその閉域から這い出てこれる子どもたちばかりではないでしょう。そのときそっと寄り添える大人がいれば。そして、寄り添うだけならば自分にも、誰にだってできるかもしれない。
それが、PIECESの真ん中にあるアイデアであり、存在意義だと私は思っています。
そして、その存在意義をこの言葉に込め上げました。
子どもをひとりぼっちにしない。
直接的には、PIECESがGoodMorning by CAMPFIREと一緒に始めたプロジェクト、様々な小規模クラウドファンディングの集まりにこの名前をつけました。
そしてそのキックオフイベントを行ったのがつい先週です。一つの門出、一つのアイデアが社会のなかに実体を持って飛び出して行く門出のイベントになったと思います。PIECESアドバイザーの湯浅さんやCAMPFIREの家入さんも駆けつけてくれました。
教育や福祉の仕事をされている方、行政の方、学生や普通の会社員の方々が100人も集まった夜でした。そんなイベントの様子を最前列からTwitterで実況していました。
Twitterで #子どもをひとりぼっちにしない で検索してみてください。37連発の実況ツイートが見つかると思います。その中からお気に入りをいくつか紹介させてください。このブログ記事はそれでおしまいです。
3つの「子どもの孤立」
— 望月優大 HirokiMochizuki (@hirokim21) 2017年3月30日
①家庭での孤立
②学校での孤立
③地域での孤立#子どもをひとりぼっちにしない #PIECES pic.twitter.com/3PACnjCeFB
「孤立のループ」
— 望月優大 HirokiMochizuki (@hirokim21) 2017年3月30日
孤立する→人から大事にされた経験が欠ける→自分を大切にできない→人からの助けを受けられない→人への信頼感がなくなる→孤立する→、、、#子どもをひとりぼっちにしない#PIECES pic.twitter.com/zA7UOA8X7q
「孤立解消のステップ」
— 望月優大 HirokiMochizuki (@hirokim21) 2017年3月30日
孤立している状態(人への信頼感の欠如)
→孤立の解消(特定の人への信頼感)
→孤立の予防(多様な人に頼れる状態)#子どもをひとりぼっちにしない #PIECES pic.twitter.com/8C9HtfSuGe
クラウドファンディングの重要性。継続的に子ども達との関係性、居場所を提供していくための人々からの支援を必要としている。一つ一つの小さな場所を社会の中に作っていきたい。https://t.co/UaAKG0cV4B#子どもをひとりぼっちにしない#PIECES pic.twitter.com/oAoSrc30E7
— 望月優大 HirokiMochizuki (@hirokim21) 2017年3月30日
コミュニティユースワーカーの塚原萌香さん。父親のひとり親家庭で育った経験。3人姉妹。父親がうまく社会につながれずアルコール中毒に。その経験から親の状況が子どもの精神面に影響すると実感。10代ママのための居場所「もえかん家」というプロジェクトを開始。#子どもをひとりぼっちにしない pic.twitter.com/rGLALqYhHR
— 望月優大 HirokiMochizuki (@hirokim21) 2017年3月30日
湯浅誠さん
— 望月優大 HirokiMochizuki (@hirokim21) 2017年3月30日
居場所の機能は4つ
①栄養や知識
②体験(物こぼしても怒られない、とか)
③時間(かまってもらえる)
④裏メニューとしての生活支援(看板を掲げすぎないことが大事)
もっとも大事なのが時間。それが溜めをつくる。自己肯定感。#子どもをひとりぼっちにしない pic.twitter.com/ouAkVP1MLA
家入さん「今の子は見た目はきれいでわからない。コミュニュケーション力もあるけど心が弱っている。さっき湯浅さんは"溜め"という言葉を使っていたけど自分は"逃げろ"と言っている」
— 望月優大 HirokiMochizuki (@hirokim21) 2017年3月30日
湯浅さん「"溜め"の前は"踊り場"と言っていた」#子どもをひとりぼっちにしない pic.twitter.com/mCjYlcwWGJ
湯浅誠さんがある支援者の方の言葉を紹介。「学習支援でマンツーマンにこだわるのは教えやすいからだけではない。誰かが自分に1-2時間向きあってくれるという体験を通じて、子どもたちの中に何かが溜まっていく。どこかの地点で溢れて高校行きたいとか言い始める。」#子どもをひとりぼっちにしない pic.twitter.com/p5JSDCeehc
— 望月優大 HirokiMochizuki (@hirokim21) 2017年3月30日
家入さん「子どものときは学校や家庭だけが世界。大人になって世界がもっと広いことを知ったけど当時はわからなかった。いまタイムスリップしたら世界は広いよと伝えてあげたい。」#子どもをひとりぼっちにしない pic.twitter.com/90U7fiHOqS
— 望月優大 HirokiMochizuki (@hirokim21) 2017年3月30日
家入さん「メンタルがズタズタでリバ邸では救えない人がいた。そのときにセーフティネットにはレイヤーがあるということを聞いた。適切な場所に誘導してあげないとみんながダメになってしまう。」
— 望月優大 HirokiMochizuki (@hirokim21) 2017年3月30日
湯浅さん「そこで裏メニューとしての生活支援が必要になるところ。」#子どもをひとりぼっちにしない pic.twitter.com/gWZG3xQfCZ
湯浅さん「左手に大変な困難を抱えた人たち、右手に自分が持っているもの、人脈やスキルでもなんでもいい。そして自分に何ができるか改めて考えてみてほしい。考えてみると案外自分にできることがあるかもしれない。それをみんなにやってみてほしい。」#子どもをひとりぼっちにしない pic.twitter.com/7BkWOk9BUh
— 望月優大 HirokiMochizuki (@hirokim21) 2017年3月30日
家入さん「長期で見れば日本の経済は弱っていくしセーフティネットからこぼれ落ちる人たちが増えてくる時代になっていくと思う。そのなかで会社が従業員のために何ができるのかを考える。渋谷のスタートアップ共同で託児所を作らないかといった話を始めたりしている」#子どもをひとりぼっちにしない pic.twitter.com/fGfXn9iesC
— 望月優大 HirokiMochizuki (@hirokim21) 2017年3月30日
湯浅さん「居場所が問うているもの。子どもは大人に構ってもらう時間が必要だ。大人にその時間はあるのか。」#子どもをひとりぼっちにしない pic.twitter.com/RSwotazDPB
— 望月優大 HirokiMochizuki (@hirokim21) 2017年3月30日
「居場所が問うているもの。子どもは大人に構ってもらう時間が必要だ。大人にその時間はあるのか。」
自分で書いたこれらの言葉とともに、これからも忘れずにいたい言葉だと思いました。
「家族」ではなくても、「他人」であっても、脆弱な状況にいる子どもや人間に対してできることがある
振り返って大事だったと肯定できる他人との関係性を私たちはいろいろなやり方でつくっていく必要があるし、つくっていくことができるはずだ
「子どもをひとりぼっちにしないプロジェクト」クラウドファンディングの特設サイトはこちら。ぜひ参加してみてください。
プロフィール
望月優大(もちづきひろき)
慶應義塾大学法学部政治学科、
Twitter @hirokim21
Facebook hiroki.mochizuki