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HIROKIM BLOG / 望月優大の日記

見えているものを見えるようにする。

上野千鶴子氏の発言を読んで思ったこと。

上野千鶴子氏の中日新聞紙上での発言が話題になっていました。炎上と言ってよいかと思います。上野氏の発言はこちらで全文読むことができます。Togetterもできていました。

この国のかたち 3人の論者に聞く|考える広場|朝夕刊|中日新聞プラス

上野千鶴子「日本人は多文化共生に耐えられないから移民を入れるのは無理。平等に貧しくなろう」 - Togetterまとめ

上野氏の発言を簡単にまとめます。カギカッコの中は引用です。

  1. 日本は今転機にある。最大の要因は人口構造の変化。
  2. 人口を維持するには自然増か社会増しかない。自然増は無理だから社会増、すなわち移民の受け入れしか方法がない。
  3. したがって、日本には次の選択肢がある。「移民を入れて活力ある社会をつくる一方、社会的不公正と抑圧と治安悪化に苦しむ国にするのか、難民を含めて外国人に門戸を閉ざし、このままゆっくり衰退していくのか。
  4. 「移民政策について言うと、私は客観的に無理、主観的にはやめた方がいいと思っています。」世界的な排外主義の流れがあり、さらに日本人は単一民族神話を信じているから多文化共生には耐えられない
  5. 結局自然増も社会像も無理だから「日本は人口減少と衰退を引き受けるべきです。平和に衰退していく社会のモデルになればいい。」
  6. 「日本の場合、みんな平等に、緩やかに貧しくなっていけばいい。国民負担率を増やし、再分配機能を強化する。つまり社会民主主義的な方向です。ところが、日本には本当の社会民主政党がない。
  7. 日本の希望はNPOなど「協」セクターにある。様々な分野で問題解決してる。人が育ってきている。
  8. 憲法改正論議についても心配していない。 日本の市民社会は厚みがある。

ネットを見ていると「移民を治安悪化に結びつけるな」「平等に貧しくなるはずなどないだろう」といった批判が多いようです。もっともだと思います。自分としても突っ込みたいところはいろいろあるのですが、「最後はNPOと市民社会に丸投げ」という論の持っていき方に対して感じた残念さについて少し書いておきたいと思います。

一言で言えば、NPOだけの力で数多くの弱者をカバーできると考えるのは現実が見えていなさすぎです。ソーシャルセクターが豊かになっていくことはとても重要なことですが、NPOがいるから国家がいらなくなるのではなく、国家の再分配機能の強化と合わさって初めて、社会のなかの広い範囲に対して十全な支援の手が届きます。国家とNPOが純粋な意味で代替的な関係にないのは明らかです。

上野氏はいろいろな活動に近いところにいるでしょうから、そんなことなどよくわかっているはずだと思います。ですが、移民受入を加速させること、再分配機能を強化することがそれぞれ政治的にとても難しいということも同時に感じており、そのうえで、その困難をどうやったら乗り越えられるかと考えるのではなく、「無理なものは無理なんだ」と言っているだけなのではないかと感じました。批判の起点になりうる認識が、現状追認に堕してしまっているように私には思えます。

少し調べてみると、上野氏は2014年の記事でも同じような趣旨のことを言っています。政権が女性労働力を活用しようとしているが、日本では行政が保育所などのインフラを整えることもできていないし、移民を入れて安い賃金でベビーシッターを頼むということもできない、だから難しいのだというようなことを言っているわけです。

「女子力を磨くより、稼ぐ力を身に付けなさい!」上野千鶴子さんが描く、働く女の未来予想図 - Woman type[ウーマンタイプ]|女の転職@type

出産後もバリキャリとして働き続ける女性がいても、子どもの面倒を見てくれる“祖母力”があるなどの条件をクリアしたレアケースに過ぎません。それ以外に「育児を外注する」というオプションがあるはずですが、北欧のように国や社会が責任を持って保育所などのインフラを整備する「公共化オプション」も、アメリカのように移民労働力を格安の賃金で雇って育児を任せるという「市場化オプション」も、日本では極めて限られている。だから日本の女たちは追いつめられているのです。

政権の女性活躍、一億総活躍という掛け声に対して、「国家や社会の側としてそれを支える準備ができていないのではないか」という指摘は、現状に対する批判的な認識という意味では必要なものだと思います。しかし、その認識からはじまって困難な現状を追認するというストーリーしか紡ぎえないのだとしたらやはり残念だと感じざるを得ません。というのも、実際、上野氏は同じ記事の結論に近いところで以下のように述べているからです。

現在20代や30代の若い女性たちも、ゆっくりまったりと生きていけばいいじゃないですか。成熟期の社会では、皆が髪を振り乱して働き、他人を蹴落としてまで成長していかなくてもいいんですから。賃金が上がらないといっても、外食せずに家で鍋をつついて、100円レンタルのDVDを見て、ユニクロを着ていれば、十分に生きて行けるし、幸せでしょう? 東日本大震災の後、日常が何事もなく続くのが何よりの幸せだと多くの方々は痛感したはずです。

結局この結論なんですね。貧しさを受け入れよ、貧しさに慣れよ、生活レベルを下げて、生活レベルが上がっていくという夢を捨てて、自分の稼ぎでギリギリ生きていける人生を生きていけ。こういう自助の勧めが結論になってしまうんです。しかも、東日本大震災の経験がある種の脅しのような形で最後に添えられている。あの悲惨に比べたら慎ましい日常はよほどましだろうというわけです。

そこには社会で同じ時代を生きる人々が連帯して、今とは別の、今より良い社会のあり方を構想し、実現に向かって努力していこうと訴えるリーダーシップのようなものはありません。難しいものは難しいというある種の諦念と、全員を救うことはできないから一人一人が自らを救え、という自己責任の陳腐で乾いた掛け声があるだけです。

この記事の最後はこう締められています。最後のリンクは「うわっ…低すぎ?もらいすぎ?!」と書かれた「年収&お仕事相性診断」のサイトへと飛ぶようになっています。記事の趣旨は明らかですね。

「女子力を磨くより、自分に投資をして稼ぐ力をつけなさい」

これが私から若い女性たちに送る、これからの時代を生き抜くためのアドバイスです。

>>>あなたの稼ぐ力はどのくらい?

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難しい現状があるとき、今とは異なる理想を語ることがバカらしく思えたり、冷ややかな目で見られることはよくあることです。もしまだ知識人の役割というものがあるとすれば、そんな冷ややかな目線を軽く跳ね返し、現実的な社会状況とも正しく折り合いをつけながら、理想に近い道がどこにあるかを探り続けることではないかと私は思います。

移民を受け入れることが難しい。ならばどこをどう変えたらその難しさを緩和できるか。社会民主政党が存在せず国家の再分配機能を強化することが難しい。ならばどこをどう変えたらその難しさを緩和できるか。これらの問いに向き合い続けなければ、上野氏と似たような結論から抜け出すことはできません。自分は考え続けるつもりです。

プロフィール

望月優大(もちづきひろき) 

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慶應義塾大学法学部政治学科、東京大学大学院総合文化研究科修士課程修了(ミシェル・フーコーの統治性論/新自由主義論)。経済産業省、Googleなどを経て、現在はIT企業でNPO支援等を担当。関心領域は社会問題、社会政策、政治文化、民主主義など。趣味はカレー、ヒップホップ、山登り。1985年埼玉県生まれ。
Twitter @hirokim21
Facebook hiroki.mochizuki
 

関連過去エントリ

私たちは私たちの(無)関心とどう付き合うか。ムクウェゲ医師と『女を修理する男』上映会の記録。

先日『女を修理する男』という映画の上映会を開催しました。日本国内で難民支援の活動をしている難民支援協会さんとWELgeeさんと一緒に企画したこの上映会、当日は100名ほどの方にお越しいただくことができました。学生、社会人、メディアや大学、NPO関係の方々もいらしていました。

上映会当日までの思い出深い経緯なども含めて、今後のためにも徒然なるままに記録しておこうと思います。

2/2 映画「女を修理する男」上映会+トークショー - 私たちは私たちの(無)関心とどう付き合うか | Peatix

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当日は最初に15分ほど会の経緯や映画の背景情報について簡単にお話し、その後映画を観て、最後に振り返りのトークを行う、という形で進めました。丸々3時間の盛りだくさんイベントです。

いきなり余談ですが、映画を観たあとにこのような形で消化できる時間があると個人的にもとてもいい体験だなと思います。誰かと話したり、誰かの感想を聞いたりしたいじゃないですか、映画のあとって。同じもやもやでも誰かと共有したもやもやはまた違うものになっていたりしますよね。

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上映会をすることになったきっかけについてもお話しました。

昨年10月にこの映画の主役であるデニ・ムクウェゲ医師が日本に来日されていました。私とWELgeeの渡部さんは彼の講演会を聞きに行ってその内容や感想をブログにアップし、難民支援協会の野津さんはHuffington Postによるムクウェゲ医師へのインタビュー記事に関わっていました。

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こちらです。

ムクウェゲ医師はノーベル平和賞の候補とも言われており、コンゴの惨状を世界中に伝えるために各国を回っていました。日本にもそのツアーの途中で立ち寄ったわけですが、期せずして私たちがそれぞれムクウェゲ医師の言葉や活動に感銘を受け、できるだけ多くの人に知ってもらいたいと考えて記事をつくっていたわけです。

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印象的だったのが、どの記事も当時とても多くの方に読まれたということでした。中東での紛争や欧米でのテロに比べて全くと言っていいほど注目されていないという危機感を持ってムクウェゲ医師は世界中を回っていたと思います。

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それが、一人一人がそれぞれの思いでつくったムクウェゲ医師についての記事がとても多くの日本人に読んでもらうことができた、そのことに勇気づけられました。そこで、ムクウェゲ医師のこと、コンゴのことをもっと多くの人に知ってもらおう、ムクウェゲ医師へのリスペクトを次につなごうということで、この映画の上映会を企画しました。

ちなみに野津さんと渡部さんはこういう人たちです。

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さて、私たちが多くの人に観てほしいと思った『女を修理する男』が一体どんな映画かについても少しだけ説明します。 

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ムクウェゲ医師が生まれたブカヴという都市があるコンゴ東部では、長きにわたって大規模かつ筆舌に尽くしがたいほどの性暴力が行われてきました。ムクウェゲ医師はそれを「性的テロリズム」と呼びます。

なぜかというと、彼はコンゴ東部で組織的に行われる性暴力を性欲ではなく、(経済的)インセンティブに基づいた行為だと考えているからです。つまり、スマホなどの電子機器の素材となる鉱物資源(タンタルなど)を支配するために、そうした性暴力が道具として用いられているということです(詳しくは記事を読んでください)。

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このことを知って衝撃を受けない人はいないと思います。ただ、同時にこんなことも思うかもしれません。とはいえ自分に何ができるのかと。

私も思いました。ただ、そのもやもやから目を背けるのがいやだったので、この上映会の副題として「私たちは私たちの(無)関心とどう付き合うか」という言葉を添えてみました。関心と無関心の間、できることとできないこととの間で一人一人がどんな風に考え、行動していくか。そのことを改めて来ていただいた人たちと一緒に考えてみたかったんですね。

遠い国での紛争や暴力、そうした背景のうえに生産される商品、それを知らずに使っている人々、否応なく発生する人間の移動と受入にまつわる摩擦。これらのことを考えてすっきりとした答えが出ることはないでしょう。だからこそこの上映会が「見ないでいようと決め込む」以外のスタンスを見つけるためのヒントになってほしいと思いました。自分にとっても、です。

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最後にトークショーで印象に残った言葉を少しだけ。

一つは、野津さんの言葉。Q&Aのときに会場から「日本はこれから難民を受け入れるべきかどうか、考えを教えてください」という質問がありました。野津さんはこんなふうに答えていました。「難民を受け入れるべきかどうかというよりも、難民の方はすでに来ている」のだと。

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野津さんが働いている難民支援協会は日本に来た難民の方が難民申請をする際に助けを求めることができる命綱のような存在です。日本に来る方の多くは日本語が話せず、難民申請の手続きもわからない。どうやって生活をしていけばいいかもわからない。日々やってくるそうした人たちに対する支援に取り組まれている野津さんだからこその言葉だと思いました。悠長なことは言っていられません。コンゴからの難民も増えているそうです。

もう一つは渡部さんの言葉。

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渡部さんのWELgeeという団体では日本にいる難民と一般の家族とをつなげる「難民ホームステイ」という事業をやっています。とある農家の家族へのホームステイの話が面白かったです。私たちは「難民」という記号というか法的なカテゴリでつい考えてしまいがちだけれど、WELgeeの活動を通じて実際にホームステイをし、家族と一緒の時間を過ごす難民の方一人一人は私たちと同じ人間だと。それを受入先の家族も自然と理解して愛着や関係性が生まれてくるそうです。

これは難民問題に限らず貧困問題でも虐待問題でも同じことだなと思います。私たちは会ったこともない人たちのことをどうしても何某かのカテゴリや括りで考えてしまいがちです。というか、それ自体が問題だとは思わないのですが、実際に会ったり、映画を観たりすることで「一人一人の人間」の具体的な生き様を想像する、その努力も同時に大切だなと改めて感じました。会場にはコンゴからの難民の方が来てくださっていて、話したらスーパーナイスガイでした。

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関係したみんなで最後に撮った写真です。みんな若いのにすごいなと、希望だなと思います。 自分は若いころもう少しひねくれていたのでリスペクトしかないです。上映会のために力を貸してくれた全ての人に感謝します。

それと最後の最後に一番大事なことです。なんとこの『女を修理する男』の短縮版が明日2/7の23時からNHK BS1で放映されるそうです。今後の上映会の予定は今のところないそうなので、ぜひこの機会をお見逃しなく。

もし観れたら、観て感じたことを周りの人と話してみてください。

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プロフィール

望月優大(もちづきひろき) 

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慶應義塾大学法学部政治学科、東京大学大学院総合文化研究科修士課程修了(ミシェル・フーコーの統治性論/新自由主義論)。経済産業省、Googleなどを経て、現在はIT企業でNPO支援等を担当。関心領域は社会問題、社会政策、政治文化、民主主義など。趣味はカレー、ヒップホップ、山登り。1985年埼玉県生まれ。
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米大統領令による入国禁止措置についてのロイター世論調査の詳細

ロイターによる外国人や難民の入国に関する大統領令についての世論調査結果が話題になっている。

入国禁止49%賛成 反対41%を上回る 米世論調査:朝日新聞デジタル

世論調査を行ったロイター自身の情報を見たほうが良いと思ったのだが、日本語記事が見当たらなかったので、こちらのロイター英語記事を参照しながら世論調査の結果をメモしておく。

Exclusive: Only a third of Americans think Trump's travel ban will make them more safe | Reuters

「入国禁止についての態度 (Attitudes on immigration ban) 」と題されたこの世論調査は合計3問の質問からなっており、ロイターが調査会社のIPSOSと共同で実施したようだ。サンプルサイズは民主党支持者が453人(信頼区間5%)、共和党支持者が478%(同5%)で、合計1201人(同3%)との記載がある。

問1:大統領令に賛成か反対か
問2:大統領令によってより安全になったと感じるか否か
問3:大統領令は対テロリズムの方法として良い見本か悪い見本か 

こちらが調査結果だが、日本語にするとともに、数字に書き下していく。一つ一つの質問や回答の数値を順々に読んでいくことで考えを深めることができる。

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問1:大統領令に賛成か反対か

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<質問>

"Do you agree or disagree with the Executive Order that President Trump signed blocking refugees and banning people from seven Muslim majority countries from entering the U.S.?"

あなたはトランプ大統領によって署名された難民及び7カ国のイスラム教徒が多数を占める国々の人々の米国への入国を禁止する大統領令について賛成ですか反対ですか?
<回答>
民主党支持者
賛成:23%
わからない:7%
反対:70%
共和党支持者
賛成:82%
わからない:5%
反対:5%
合計
賛成:49%
わからない:10%
反対:41%
 

問2:大統領令によってより安全になったと感じるか否か

f:id:hirokim21:20170201122725p:plain

<質問>

"What comes closer to your opinion? Because of Trump's travel ban, I feel more safe / less safe."

どちらがあなたの意見に近いですか? トランプによる渡航禁止によって、私はより安全だと感じる / 私はより安全でないと感じる。

<回答>
民主党支持者
より安全:10%
わからない:42%
より安全でない:48%
共和党支持者
より安全:58%
わからない:34%
より安全でない:8%
合計
より安全:31%
わからない:43%
より安全でない:26%
 

問3:大統領令は対テロリズムの方法として良い見本か悪い見本か

Total
 
Less
26%
 
Don't know
43%
 
More
31%

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<質問>

"What comes closer to your opinion? Because of Trump's travel ban, I feel America is setting a good example / bad example of how best to confront terrorism"

どちらがあなたの意見に近いですか?トランプによる渡航禁止によって、どのようにすればテロリズムに最もうまく対抗するかについて、私はアメリカが良い見本を示したと感じる / 悪い見本を示したと感じる。

<回答>
民主党支持者
良い見本:14%
わからない:16%
悪い見本:70%
共和党支持者
良い見本:68%
わからない:19%
悪い見本:14%
合計
良い見本:38%
わからない:22%
悪い見本:41%
 

いくつか言えること

  • 大統領令について民主党支持者は反対多数(70%)、共和党支持者は賛成多数(82%)。民主党支持者の23%が賛成というのは、それなりに多いと感じる。
  • 共和党支持者のうち、大統領令に賛成したのは82%だが、それによってアメリカが安全になったと感じているのは58%。対テロリズムの良い手法だと考えているのは68%。賛成した人すべてがより安全になった、対テロリズムの良い手法だと考えているわけではない。
  • 一つの世論調査の結果なので鵜呑みにはできないが、大まかな傾向として、二大政党支持者間での大統領令に対する態度の分断は現実に存在している、ということは言っても良さそうだ。それほど顕著な数値の差が出ていると思う。 
  • ただ、アメリカ国民全体として見ると、大統領令への賛成は49%、より安全になったと感じているのは31%、対テロリズムの良い手法だと考えているのは38%と過半数を下回っている。特により安全になったと感じている割合が低く出ているのが印象的ではある。

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今回の大統領令について

その他

プロフィール

望月優大(もちづきひろき) 

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慶應義塾大学法学部政治学科、東京大学大学院総合文化研究科修士課程修了(ミシェル・フーコーの統治性論/新自由主義論)。経済産業省、Googleなどを経て、現在はIT企業でNPO支援等を担当。関心領域は社会問題、社会政策、政治文化、民主主義など。趣味はカレー、ヒップホップ、山登り。1985年埼玉県生まれ。
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ワシントン州司法長官が信教の自由を保障する憲法修正第一条を巡ってトランプ大統領らを提訴へ「法廷では最大の声よりも憲法が勝る」

大きなニュースが飛び込んできた。

全米初、大統領を提訴へ=入国禁止令は「違憲」-ワシントン州:時事ドットコム

米西部ワシントン州のファーガソン司法長官は30日、トランプ大統領や国土安全保障省などを相手取り、難民やイスラム圏7カ国の出身者らの一時入国禁止を命じた大統領令を「違憲」とする訴訟を同州シアトルの連邦地裁に起こすと発表した。同日中に提訴する。同大統領令をめぐり州司法長官による提訴はワシントン州が初となる。

難民や7カ国の人々の入国制限に関する大統領令についてはこれまでもブログに書いてきたが、ついに州政府がこの件をめぐって大統領本人と国土安全保障省を連邦地裁に提訴するというところまで事態が進展したということだ。

この時事の記事にはワシントン州のファーガソン司法長官が「大統領でさえも、法を超越しない」と発言したとの記載があり、その原文がどんなものか気になり探してみた。

ファーガソン司法長官は、大統領令は憲法に定められた法の下の平等や、信仰の自由などを侵害していると指摘。「大統領でさえも、法を超越しない」と強調した。

というのも、ここで言われている「法」が何なのかということが実際の訴訟においてとても重要であるだけでなく、大統領と憲法との関係を問題にするような意味合いも込められているのではないかと思ったからだ。

さて、ワシントン州の地元紙であるThe Seattle Timesの記事に、おそらくこの発言の原文にあたるのではないかと思われる文章を見つけることができた。時事の「大統領でさえも、法を超越しない」という直接的な文章とはやや趣が異なるが、おそらくこちらではないかと思う。

AG Bob Ferguson to file lawsuit seeking to invalidate Trump’s immigration order | The Seattle Times

“We are a country based on the rule of law. In a courtroom, it is not the loudest voice that prevails. It’s the Constitution,” Ferguson, a Democrat, said at a news conference in Seattle.

「私たちは法の支配に基礎を置く国である。法廷では、最も大きな声が勝つのではない。憲法が勝つのである。」民主党員のファーガソンはシアトルでの記者会見でこう発言した。

実際には、憲法修正第一条が争点になるようだ。記事にはこうある。

Noah Purcell, state solicitor general in Ferguson’s office, said Washington’s lawsuit will argue Trump’s executive order violates constitutional guarantees of religious freedom and equal protection.

ワシントン州のノア・パーセル訟務長官は、ファーガソン長官の事務所で、ワシントン州の訴訟はトランプの大統領令が憲法によって保障された信教の自由とその平等な保護を侵していると主張するだろうと語った。

憲法修正第一条の具体的な条文も参考まで紹介する。

Congress shall make no law respecting an establishment of religion, or prohibiting the free exercise thereof; or abridging the freedom of speech, or of the press; or the right of the people peaceably to assemble, and to petition the Government for a redress of grievances.

合衆国議会は、国教を樹立する法律もしくは自由な宗教活動を禁止する法律、または言論もしくは出版の自由または人民が平穏に集会し、不平の解消を求めて政府に請願する権利を奪う法律を制定してはならない。

(翻訳は 新版 世界憲法集 (岩波文庫) より)

トランプの大統領令がこの修正第一条をどのように侵しているかという点だが、キリスト教徒とそれ以外の宗教の信者を入国管理上差別しているというポイントが争点になるようだ。ワシントン州知事がその点についての発言をしていることが同じThe Seattle Timesの記事で触れられている。

The attorney general was joined by Democratic Gov. Jay Inslee, who blasted Trump’s refugee ban aimed at several war-torn, Muslim majority nations — and giving precedence to Christians — as “un-American.”

“The fact is that its impact, its cruelty, its clear purpose is an unconscionable religious test,” Inslee said, pointing to the executive order’s provision calling for prioritizing the admittance of Christian refugees.

具体的には、大統領令において7カ国のイスラム教徒が多数を占める国民の入国を停止しているという点、加えて難民受け入れ停止の例外措置として宗教的少数派の受け入れについては例外を許容する余地を認めているものの、それがキリスト教徒を優遇するという差別的な措置として利用される可能性がある点が問題にされている。

後者の難民受け入れにおけるキリスト教徒の優遇の恐れについては、トランプ自身のこれまでのツイッター及び様々なメディアでの発言が原因になっている。

例えば1/27のトランプによる発言。これは大統領令署名前の発言で、「シリアのキリスト教徒のほうがイスラム教徒よりもより強く迫害されており、米国への入国がより難しい、それは不公平だ」という趣旨のことを述べている。

“Do you know if you were a Christian in Syria, it was impossible, at least very tough, to get into the United States?” Trump asked. “If you were a Muslim, you could come in, but if you were a Christian, it was almost impossible. And the reason that was so unfair ― everybody was persecuted, in all fairness ― but they were chopping off the heads of everybody, but more so the Christians. And I thought it was very, very unfair.”

Donald Trump Says He Would Prioritize Resettling Christians Over Other Refugees | The Huffington Post

こちらは1/29のツイート。

中東のキリスト教たちが多数処刑されてきた。私たちはこの恐怖が続くことを許すことはできない!

今後もワシントン州による訴訟の行方、そして他州での動きも引き続き注視していきたい。ワシントン州の訴訟は、当州に拠点を置くアマゾンやエクスペディアといった企業からも大統領令による「ビジネス上の不利益(negative business impacts)」があるとして賛同を得ている。

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望月優大(もちづきひろき) 

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私たちが寛容であるためのヒント。映画『みんなの学校』上映会の前に。

2月17日の夜に『みんなの学校』という大阪市立大空小学校を舞台にしたドキュメンタリー映画の上映会をします。

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この上映会は、私が取り組んでいる社会貢献プログラム(SmartNews ATLAS Program)の一環である「社会の子ども」というイベントの第3回です。当日は大阪から真鍋俊永監督もお越しくださいます。

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2015年に公開されたこの映画を観て、いま私が考えていることを少し書いてみたいと思います。人が人に寛容であるということについてです。2017年のいまだからこそ、このことを考えてみることの意味があると思っています。

その前に、話の映画のあらすじを紹介します(公式HPより引用)。

ーーーーー

"すべての子供に居場所がある学校を作りたい。

大空小学校がめざすのは、「不登校ゼロ」。ここでは、特別支援教育の対象となる発達障害がある子も、自分の気持ちをうまくコントロールできない子も、みんな同じ教室で学びます。ふつうの公立小学校ですが、開校から6年間、児童と教職員だけでなく、保護者や地域の人もいっしょになって、誰もが通い続けることができる学校を作りあげてきました。

学校が変われば、地域が変わる。そして、社会が変わっていく。

すぐに教室を飛び出してしまう子も、つい友達に暴力をふるってしまう子も、みんなで見守ります。あるとき、「あの子が行くなら大空には行きたくない」と噂される子が入学しました。「じゃあ、そんな子はどこへ行くの? そんな子が安心して来られるのが地域の学校のはず」と木村泰子校長。やがて彼は、この学び舎で居場所をみつけ、春には卒業式を迎えます。いまでは、他の学校へ通えなくなった子が次々と大空小学校に転校してくるようになりました。"

ーーーーー

大空小学校が有名なのには2つの理由があります。特別支援の対象となる子どもが全校生徒に占める割合がとても高いこと(220人中30人以上)、そして特別支援の子どもがそうでない子どもと同じ教室で一緒に時間を過ごしていること、この2つです。

このことを知っていた私は、映画を観始めるときに無意識にこんなふうに考えていました。

"この映画は先生や一般の生徒たちが特別支援の生徒たちに対して寛容であろうとする姿を映しているのだろう。"

映画を観終わってわかるのは、この思い込みにはとても大きな間違いがいくつか含まれていたということです。私の学びを3つだけ共有させてください。

① 寛容であることは、自分をコントロールできるということ。
② 大人も子どもも、特別支援の子どもも、みんなそれができない。
③ 寛容な社会は寛容な個人を勇気づける。寛容は蓄積し、育っていく。

① 寛容であることは、自分をコントロールできるということ。

「寛容」という言葉を考えるとき、そこではいつもある人とある人との関係性やふるまいを念頭に浮かべてしまうと思います。しかし、この映画を観て考えたのは、自分の振る舞いを制御することの難しさが寛容であることの難しさの根源にあるのではないかということです。

具体的にはどういうことか。むしゃくしゃして大きな声を出してしまう、蹴ってしまう、殴ってしまう、殴られたから殴ってしまう、認めたいのに認められない、謝りたいのに謝ることができない。

映画を観ている側としては、「素直に謝ってしまえばいいのに・・」と思うところでも本人にはもちろんそうできない。そこで謝ることほど難しいことはない。その場にいる人間にとってはその感覚が現実です。

他者に対して寛容であるということは自分の振る舞いを制御できるということ、他者に対してどう振る舞うかということと自己に対してどう振る舞うかということとを切り離すことはできない、そういうことなのだろうと思います。

② 大人も子どもも、特別支援の子どもも、みんなそれができない。

そして、この自分の行動を制御することの難しさは決して子どもだけの話ではない、そのこともこの映画を観てよくわかったことです。座親先生という若い新任の先生が出てきます。映画のなかでの彼の振る舞いを見て、彼の苦悩を見て、何も感じない人はいないはずです。

ただ、これは「若い」「新任」の先生の話だけではありません。「未熟」な若者だけの話ではないのです。校長先生もそう、ベテランの先生たちもそうです。彼らがそれぞれに寛容であろうとして、自分自身の気持ちやふるまいをコントロールしようとして、失敗して、苦しんでいる様子はストーリーの端々に出てきます。

そして、寛容の対象でしかないと勘違いしてしまいがちな特別支援の子どもたちも同じです。彼ら自身が、他者とどのように同じ空間と時間を過ごしていけるか、そのことに葛藤する当事者です。学校に行く、暴力を振るわない、その難しさに一人一人の子どもが直面する。そして、自分と向き合って乗り越えていこうとする。

でも、簡単ではない。どうすれば一人一人がこの難しさから逃げずに向き合い続けることができるのか、私が得たヒントについて最後に書いておきたいと思います。

③ 寛容な社会は寛容な個人を勇気づける。寛容は蓄積し、育っていく。

結論を先に書いてしまいます。大空小学校は、個人としてではなく、集団として、社会としてこの「寛容」という人類永遠の課題に取り組んでいると思いました。

人に優しくあろうとする、頼まれてもいないのに助ける、まず自分から謝る、そうしようとする個人にとっては二つの種類のつらさがあります。

一つは、これまで書いてきたことです。寛容に振る舞えない。それが正しいとわかっていてもいまそう振る舞うことがとても難しい、つい殴ってしまう、大声を出してしまう、逃げてしまう、こういう種類の難しさ、つらさがあります。

もう一つは寛容の相手が自分の寛容を尊重しない、評価しない、少なくとも自分にはそのように見える、というつらさです。本質的に、寛容はギブアンドテイクではない。得られる利得がわかっているから手渡すギフトではありません。

「相手がどう反応しようと自分はこのように振る舞うのだ」そんな風に凛とした姿勢で振る舞うことです。難しい。当たり前ですね。そして、これが一つめのつらさに跳ね返って来ます。だから、寛容は難しい。

そして、だから大空小学校はすごい。どう考えても難しいから、それに挑戦し続け、ときにやってのける集団はすごいのです。「寛容な社会は寛容な個人を勇気づける。寛容は蓄積し、育っていく。」と書きました。私はそのことが大空小学校で起こっているのだと感じています。具体的なことはここでは書ききれません。だから大空小学校が実際にどんなふうであるか、ぜひ映画を観ていただけたら嬉しく思います。

申し込みはこちらのリンクからです。

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プロフィール

望月優大(もちづきひろき) 

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慶應義塾大学法学部政治学科、東京大学大学院総合文化研究科修士課程修了(ミシェル・フーコーの統治性論/新自由主義論)。経済産業省、Googleなどを経て、現在はIT企業でNPO支援等を担当。関心領域は社会問題、社会政策、政治文化、民主主義など。趣味はカレー、ヒップホップ、山登り。1985年埼玉県生まれ。
Twitter @hirokim21
Facebook hiroki.mochizuki
 

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全訳:ドナルド・トランプ「厳格な審査に関する最近の大統領令についての声明」

トランプ大統領がつい先ほど1/29 18:16(日本時間1/30 8:16)にFacebookで出した声明を全訳した。Donald J. Trump - Statement Regarding Recent Executive... | Facebook

この記事の内容は以下の通り。

  • 全訳:「厳格な審査に関する最近の大統領令についての声明」
  • トランプの政策はオバマのそれと本当に似ているのか
  • トランプの声明はBreitbartの記事を元にしている可能性がある
  • 声明直前のツイート

全訳:「厳格な審査に関する最近の大統領令についての声明」

「厳格な審査に関する最近の大統領令についての声明」

Statement Regarding Recent Executive Order Concerning Extreme Vetting

アメリカは移民たちの誇り高き国であり、私たちは抑圧から逃れてくる人々に対する同情を示し続ける。しかし、私たちはそれを私たち自身の市民と国境を守りながら行わなければならないのだ。アメリカはこれまでいつも自由の地であり、勇者たちの故郷であり続けてきた。

America is a proud nation of immigrants and we will continue to show compassion to those fleeing oppression, but we will do so while protecting our own citizens and border. America has always been the land of the free and home of the brave.

私たちはアメリカを自由で安全なものに保ち続ける。メディアはそれを知っているが、それを言うことを拒否している。私たちの政策はオバマ大統領が2011年に行ったものと似ている。つまり、彼がイラクからの難民に対するビザの発給を6ヶ月に渡って停止した政策と似ているということだ。大統領令で名指されている7カ国はオバマ政権時代に悪の源泉と名指されている国々と同じである。明確にしておくが、これはムスリム禁止令(Muslim ban)ではない。メディアの報道は誤っている。

We will keep it free and keep it safe, as the media knows, but refuses to say. My policy is similar to what President Obama did in 2011 when he banned visas for refugees from Iraq for six months. The seven countries named in the Executive Order are the same countries previously identified by the Obama administration as sources of terror. To be clear, this is not a Muslim ban, as the media is falsely reporting.

これは宗教に関することではない。テロ、そして私たちの国を安全に保つことに関することである。世界にはこの大統領令の影響を受けない40以上ものイスラム教国がある。私たちは次の90日間に現在の制度を見直し、最も安全な方法を実施できたあかつきいは、全ての国々に対してビザの発給を再開する。

This is not about religion - this is about terror and keeping our country safe. There are over 40 different countries worldwide that are majority Muslim that are not affected by this order. We will again be issuing visas to all countries once we are sure we have reviewed and implemented the most secure policies over the next 90 days.

私はシリアにおける恐ろしい人道危機に巻き込まれた人々に対してとても強い感情を持っている。私の第一の優先順位はつねに私たちの国を守り奉仕することであるが、しかし大統領として、苦しんでいるそれら全ての人々を助ける方法を見つけるつもりである。

I have tremendous feeling for the people involved in this horrific humanitarian crisis in Syria. My first priority will always be to protect and serve our country, but as President I will find ways to help all those who are suffering.

トランプの政策はオバマのそれと本当に似ているのか

トランプ大統領の反撃であり、検証が必要な争点の一つに「私たちの政策はオバマ大統領が2011年に行ったものと似ている」という主張がある。これについて、ワシントンポストが早速事実関係を調査していたので紹介する

Trump’s facile claim that his refugee policy is similar to Obama’s in 2011 - The Washington Post

ワシントンポストによると違いは以下3点にまとめられる。

  1. オバマの政策の背景には、イラクから米国に入国した2人の難民がイラクにいたころに爆弾をつくっていた事実が明らかになり、ケンタッキー州で逮捕されたという出来事があった。こうした明白な脅威があった当時と異なり、トランプの政策には明確な理由づけがない。
  2. ビザの発給がかなり遅くなっているという報道はあったもの、オバマ自身によるビザの発給停止についての表明はなかった。
  3. オバマの政策はグリーンカード保有者までをも対象とする包括的なものではなかった。

トランプの声明はBreitbartの記事を元にしている可能性がある

少し驚いたのだが、トランプの声明がFacebookでアップされるより数時間前に、alt-right系媒体のBreitbartが同趣旨の記事をアップしていた。なお、トランプ政権の首席戦略官スティーブ・バノンは政権参画前にBreitbartの会長を勤めていた。

FLASHBACK: Obama Suspended Iraq Refugee Program for Six Months Over Terrorism Fears in 2011 - Breitbart

実際に記事がアップされた時間がわからないのだが、twitterで検索してみると、トランプ大統領の声明より前にアップされていたのは間違いないことがわかる。

声明直前のツイート

トランプ大統領はこの声明を出す前にこの問題に関連して以下2つのツイートをしている。

 中東のキリスト教たちが多数処刑されてきた。私たちはこの恐怖が続くことを許すことはできない!

私たちの国は強い国境と厳格な審査を必要としている。今だ。ヨーロッパ全土、そして実際には世界中で起きていることを見てほしい。恐ろしい混乱だ!

また、ニューヨークタイムズやワシントンポストをフェイクニュースと罵るようなツイートも投稿している。

関連過去エントリ

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望月優大(もちづきひろき) 

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慶應義塾大学法学部政治学科、東京大学大学院総合文化研究科修士課程修了(ミシェル・フーコーの統治性論/新自由主義論)。経済産業省、Googleなどを経て、現在はIT企業でNPO支援等を担当。関心領域は社会問題、社会政策、政治文化、民主主義など。趣味はカレー、ヒップホップ、山登り。1985年埼玉県生まれ。
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難民受け入れ等に関するトランプ米大統領令「米国への外国人テロリストの入国から国民を保護する」について

1/27日金曜日に署名された米大統領令について情報を整理しておきたい。トランプ大統領の就任以降、毎日のように大統領令が出されているが、その一つについてである。

シリア難民の受け入れ停止やシリアを始めとする7カ国の人々に対するビザの発給停止など様々な措置を含むこの大統領令には “Protecting the Nation From Foreign Terrorist Entry Into the United States.” というタイトルがついている。日本語にすると「米国への外国人テロリストの入国から国民を保護する」となる。

大統領令の英語全文がNew York Timesにアップされている。大統領令の日本語全訳はまだ目にしていない。

この大統領令にはINA (Immigration and Nationality Act ; 移民国籍法) やU.S.C. (United States Code ; 合衆国法典) への参照が多数あり、大統領令だけを読んですべてがわかるわけではない。各種記事などを読みながら今のところわかっている情報を整理した。

大きく分けると、①難民受け入れに関する措置と、②「特定の懸念がある」7カ国の国民の入国に関する措置のそれぞれについて書かれている。本当はそれ以外にもいろいろと書いてあるのだが、特に議論を呼んでいるこの2点について情報をまとめておく(関心がある方は大統領令の本文に当たってください)。また、最後に大統領令のあとに起きている出来事についても簡単に触れている。

①難民受け入れについて

大統領令のセクション5に書いてある。

Sec. 5. Realignment of the U.S. Refugee Admissions Program for Fiscal Year 2017.(会計年度2017年における米国難民認定プログラムの再編成)

まず、会計年度の2017年は、2016年10月から2017年の9月までの12ヶ月間である。なので、今のことである。1/27に大統領令が出されてからすぐに実効化されている。

以下のことが書いてある。まず、米国難民認定プログラムを120日間停止する、ということが書いてある。これは、あらゆる国からの難民受け入れを1/27から120日間停止するということである。

The Secretary of State shall suspend the U.S. Refugee Admissions Program (USRAP) for 120 days.

次に、上記の措置を前提としたうえで、シリア難民についてはさらに以下のことが書いてある。要約すると、シリア難民の入国は米国の利益にとって有害だから、私がその判断を変えるまでは(無期限に)受け入れを停止する、ということである。

I hereby proclaim that the entry of nationals of Syria as refugees is detrimental to the interests of the United States and thus suspend any such entry until such time as I have determined that sufficient changes have been made to the USRAP to ensure that admission of Syrian refugees is consistent with the national interest.

さらに、会計年度2017年の難民受け入れ総数についても言及がある。端的に言うと会計年度2017年は難民受け入れの上限を5万人とする、ということが書いてある。

I hereby proclaim that the entry of more than 50,000 refugees in fiscal year 2017 would be detrimental to the interests of the United States, and thus suspend any such entry until such time as I determine that additional admissions would be in the national interest.

5万人というのがどういう意味を持つかというと、昨年9月にオバマ大統領が11万人受け入れると宣言した人数の半分以下になっている、という意味合いがある。

米国は2013~15年にかけて年間7万人の難民を受け入れてきた。16年にはその数を8万5000人に拡大。17年の11万人受け入れが実現すれば、米国に入国する難民は15年から57%増加することになる。オバマ政権は従来、厳しい状況に置かれた難民のため、すべての国々が支援を強化するべきだとの立場をとっている。
CNN.co.jp : 米政府、17年に難民11万人受け入れ 15年から57%増

最後に、難民受け入れの停止期間中における例外的な取り扱いの可能性についても言及がある。具体的には、出身国内で宗教的少数派である場合や、既存の国際規約に従う場合、すでに米国に向けて渡航しており入国を拒否することが過度の困難をもたらす場合などにおいて、彼らを難民認定することが米国に対するリスクとならない場合にかぎり、入国を許可することもケースバイケースではありえる、ということが書いてある。

the Secretaries of State and Homeland Security may jointly determine to admit individuals to the United States as refugees on a case-by-case basis, in their discretion, but only so long as they determine that the admission of such individuals as refugees is in the national interest — including when the person is a religious minority in his country of nationality facing religious persecution, when admitting the person would enable the United States to conform its conduct to a preexisting international agreement, or when the person is already in transit and denying admission would cause undue hardship — and it would not pose a risk to the security or welfare of the United States.

難民受け入れについての内容を簡単にまとめると、

  • あらゆる国からの難民受け入れを120日間停止
  • シリア難民については受け入れを無期限に停止
  • 会計年度2017年の難民受け入れ総数を5万人に制限(オバマ大統領は11万人と言っていた)
  • 120日間の停止期間中、ケースバイケースで難民受け入れを行う可能性がないわけではない

②「特定の懸念がある」7カ国の国民の入国について

大統領令のセクション3に書いてある。こちらは難民に限らず特定の7カ国の国民による米国への入国に関する内容となっている。

Sec. 3. Suspension of Issuance of Visas and Other Immigration Benefits to Nationals of Countries of Particular Concern.(特定の懸念がある国の国民に対するビザの発給及びその他の移住に関する利益の停止)

各種報道にもある通り、「特定の懸念がある国」は以下の7カ国である。

  • シリア
  • イラク
  • イラン
  • イエメン
  • ソマリア
  • スーダン
  • リビア 

大統領令に書かれていることは、これら7カ国からの外国人の入国が米国の利益に対して有害である可能性があり、したがって今後90日間にわたって、移民であろうとそうでなかろうと、当該7カ国の国民は米国への入国を拒否される、ということである。移住を希望しているかただの観光目的かにかかわらず、入国自体が拒否されるということだ。

I hereby proclaim that the immigrant and nonimmigrant entry into the United States of aliens from countries referred to in section 217(a)(12) of the INA, 8 U.S.C. 1187(a)(12), would be detrimental to the interests of the United States, and I hereby suspend entry into the United States, as immigrants and nonimmigrants, of such persons for 90 days from the date of this order (excluding those foreign nationals traveling on diplomatic visas, North Atlantic Treaty Organization visas, C-2 visas for travel to the United Nations, and G-1, G-2, G-3, and G-4 visas)."

この文章が行政の現場においてより具体的にどのような形で執行されるかということが混乱を呼んでいるようだ。ワシントンポストの記事では、いわゆるグリーンカード(永住権)保持者であっても、当該7カ国の国籍を持ちかつ大統領令が出たタイミングで外国にいた者は、そのあと米国に帰国しようとする場合には入国を拒否されると政府職員が認めた、と報道されている。

また、当該7カ国との二重国籍者や、当該7カ国で生まれたあとに英国のような同盟国のパスポートを持つに至ったものも、同様に扱われるとのことである。(ここでの「二重国籍者」に米国との二重国籍者が含まれるかどうかは文章からは読み取れなかった。)

But as the day progressed, administration officials confirmed that the sweeping order also targeted U.S. legal residents from the named countries — green-card holders — who were abroad when it was signed. Also subject to being barred entry into the United States are dual nationals, or people born in one of the seven countries who hold passports even from U.S. allies, such as the United Kingdom. 

ちなみに、BBCの報道では、グリーンカード保有者の扱いは不透明だとされている。

It is unclear how the order will affect citizens with legal permanent residency - people with so-called green cards. Rights groups have advised people to consult immigration lawyers before travelling outside the US or trying to return

当該7カ国の国民の入国についての措置について簡単にまとめると

  • シリア、イラク、イラン、イエメン、ソマリア、スーダン、リビアの国民は、90日間、米国への入国を拒否する
  • 米国のグリーンカード保有者の扱いは不透明だが、グリーンカード保有者であっても、当該7カ国の国民は入国を拒否されると行政職員が認めたという報道もある

大統領令のあとに起きたこと

大統領令にもとづき、実際に多くの人々が米国の空港で拘束されたり、外国の空港で米国行きの飛行機への搭乗を拒否されたりということが始まっている。

ニューヨークのJFK国際空港では、1/28土曜日に11人が拘束された。これを見て多くの人々が空港に集まり「Let Them In」と声を上げた。

この動きと並行して、ACLU(アメリカ自由人権協会)所属の弁護士らがニューヨーク等の連邦裁判所に対して救済を申し立てていた。連邦裁判所は、米国全土において、大統領令を理由に拘束されている人々が出身国に強制送還されることによって回復不可能な損害が出てしまう可能性を認め、この申し立てを認めた。

まとめ

①難民受け入れについて

  • あらゆる国からの難民受け入れを120日間停止
  • シリア難民については受け入れを無期限に停止
  • 会計年度2017年の難民受け入れ総数を5万人に制限(オバマ大統領は11万人と言っていた)
  • 120日間の停止期間中、ケースバイケースで難民受け入れを行う可能性がないわけではない
②「特定の懸念がある」7カ国の国民の入国について
  • シリア、イラク、イラン、イエメン、ソマリア、スーダン、リビアの国民は、90日間、米国への入国を拒否する
  • 米国のグリーンカード保有者の扱いは不透明だが、グリーンカード保有者であっても、当該7カ国の国民は入国を拒否されると行政職員が認めたという報道もある
1/28土曜日に、連邦裁判所は、米国全土において、大統領令を理由に米国から強制送還されようとしている人々の救済を認めた。今後この大統領令がどのような形で運用されていくのかは不透明である。

(1/30追記)

本件についてのトランプ大統領による声明を全訳しました。

プロフィール

望月優大(もちづきひろき) 

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慶應義塾大学法学部政治学科、東京大学大学院総合文化研究科修士課程修了(ミシェル・フーコーの統治性論/新自由主義論)。経済産業省、Googleなどを経て、現在はIT企業でNPO支援等を担当。関心領域は社会問題、社会政策、政治文化、民主主義など。趣味はカレー、ヒップホップ、山登り。1985年埼玉県生まれ。
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