「難民は気持ちの悪い害虫だ」とドイツの政治家は言った。
難民受け入れに取り組んできた一つ一つの国は、国内からのバック
メルケル首相は「われわれは成し遂げられる」というスローガンを
いま、国連に代表される「超国家的な連携」という人類の夢が危機
この不信には長い歴史がある。今回の難民サミットの開催を呼びかけたアメリカ自身、ブッシュ息子時代に
国連だけではない。EUに対する各国の不信の高まりも同じ文脈に
フランス国民戦線の党首マリーヌ・ルペンはこう言った。「大規模な移民と多文化主義はEUが生み出したものです。」そして「私たちは自由なフランスを欲しています。自らの法律とマネーの支配者であり、自らの国境の番人であるような」とも。超国家的な連携から脱することが、かつては自らの手中にあった完全無欠の自由を回復する、その感覚が移民や難民の排斥を訴える声のすぐ隣にある。
国連総会に合わせてニューヨークで開かれた難民サミットは、アメリ
つい先日のベルリン市議会選で当選したAfDの政治家がFacebookで「難民は気持ちの悪い害虫だ」という書き込みを書いていたことが明らかになった。このKay Nerstheimerという52歳の議員はこの投稿以外にもナチス時代を賛美するような発言を度々行っていたという。
私はドイツ語が読めないが、以下の英語記事に今は消去されたという今年1月のFacebook投稿のスクリーンショットが掲載されており、そこでは難民について「ドイツの人々が生み出した果実を食べる寄生虫 (the parasites that feed on the juices of the German people) 」と書かれているという。
私たちが生きているのはこうした時代である。人々の代わりに「本音を言う」政治家が暗い支持を集め、かつては理想主義を掲げた指導者がその勢いに慄き「われわれは成し遂げられる」というスローガンを降ろす。人道危機のコントロール、その危機によって生み出された難民の受け入れ。その両面において国民国家間の超国家的な連携が無力を示す中、その超国家的連携への嫌悪の感情が国家の器をどんどん小さくしていく。
私たちはどこから来て、どこへ行くのか。本音を言ってさえいれば、私たちは幸せになれるのか。自信に満ちて本音を言う人たちが、私は怖い。
プロフィール
望月優大(もちづきひろき)
慶應義塾大学法学部政治学科、
Twitter @hirokim21
Facebook hiroki.mochizuki
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