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HIROKIM BLOG / 望月優大の日記

見えているものを見えるようにする。

お金で買えないもの

他人によるものの多くはお金を払えば買うことができる。ただ、買えないものもある。何か。親切である。

人は誰しも一人で生きているわけではないから、他人がつくったものや他人の行為のおかげで生きていくことができる。食べるもの、住んでる家、歩いてる道、乗ってる電車、読んでる本、何でもいい、自分じゃない誰かがつくったものに囲まれて人生は進んでいく。

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何かを買うということは取引である。親切にするということは贈与である。そして、取引は贈与ではない。だから、定義上、親切は買えない。そして、当たり前だが、親切は売れない。だから、これも当然なのだが、ほっておくと社会のなかで売り物はどんどん増えていくが、親切は勝手には増えず、むしろ減っていく。親切には対価がないからだ。(いい人が稀少生物のように見られる理由がここにある。対価がないのに親切を繰り出す人は普通ではないからだ。)

エジプトでおなかを壊し、地下鉄で思いっきり吐いてしまったとき、周りのエジプト人みんなが助けてくれた。みんなが自然と集まって声をかけてくれたり、ティッシュを渡してくれたりした。誰に命令されたのでもなく、大勢がそうしてくれたのである。こうした経験から、親切さというのは、とある一人のいい人の個人的な素質ではなく、社会的に共有されたカルチャーのようなものなのではないかと思っている。そして、最近、そのカルチャーを「ポジティブバイブス」と呼んでいる。一人で。

さて、憲法で保障された自由には様々なものがあるが、その中でも表現の自由には他の自由(営業の自由とか居住移転の自由とか)に比べて優越的地位が与えられていると木村草太さんという若い憲法学者の方が言っていた。表現することには対価がないことがほとんどだから、表現には社会への贈与という側面があるというのがその理由だと彼は解釈していて、とても面白い考え方だと思った。いろいろな人が対価もないのに、考えたことを表現する。それを受け取った誰かのなかに新しい視点や考えが生まれ、新しい表現につながっていく。これもまた、ポジティブバイブスだろうと思う。

ポジティブなバイブスを広めていきたいぜ。

(ちなみに、(良い)政府が必要な理由も同じところから出てくるのだけれど、それについてはまた別の機会に書くことにしよう。)

プロフィール

望月優大(もちづきひろき)

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慶應義塾大学法学部政治学科、東京大学大学院総合文化研究科修士課程修了(ミシェル・フーコーの統治性論/新自由主義論)。経済産業省、Googleなどを経て、現在はIT企業でNPO支援等を担当。関心領域は社会問題、社会政策、政治文化、民主主義など。趣味はカレー、ヒップホップ、山登り。1985年埼玉県生まれ。
Twitter @hirokim21
Facebook hiroki.mochizuki

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(「ポジティブバイブス」は、この動画シリーズの最後のシーンで出てくる言葉。初めて観たとき深く感動し、それ以来、一人で脳内で使っている。)