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HIROKIM BLOG / 望月優大の日記

見えているものを見えるようにする。

「社会を変える」を実装的に考える〜PizzaX with KitchHikeの感想①〜

こんにちは。望月です。6月からPizzaX(ピザックス)というイベントを毎月開催しています。昨日のPizzaX vol.3はKitchHikeの山本さんと藤崎さんに来てお話してもらいました。二人ともKitchHikeの創業者で、山本さんがビジョンを、藤崎さんがウェブサービスとしての実装を、それぞれ担当されています。

 

ここでさらっと「実装」という言葉を使いましたが、お二人の話を聞いて改めてこの言葉について考えてみました。「社会を変えたい」と思ったとき、それを「実装」するって一体どういうことなのでしょうか?


KitchHike

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まずHikeしてみる

KitchHike(キッチハイク)というサービスは、ざっくり言うと「他人の家に行ってご飯を作ったり食べたりできるサービス」です。ただの他人ではなく「外国人の他人」であるところがミソです。ぼくらPizzaX運営チームも一度ためしにHikeしてみました。代々木上原にあるジュエリーショップで普通のお宅でのHikeとはちょっと違うスタイルだったのですが、ジャスティンさんがおいしいスリランカカレーを2種類振る舞ってくれました。

 

ただご飯を食べるだけではなくて、スリランカの色々なお話を聞かせてくれたり、様々なスパイスについて教えてくれたり、体験としてとても楽しい時間を過ごす事ができました。スリランカはまだ行ったことがないのですが、とても興味を持ちました。「世界の全ての国に行く」ことよりも、「世界の全ての国の人に会う」ことのほうがだいぶ簡単なのかもしれません。KitchHikeがあることですし。

 

代々木上原でスリランカカレー

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仏教とプログラミング

で、イベントでの話に移るのですが、藤崎さんが「仏教とプログラミング」というテーマでとても面白い話をしてくれました。藤崎さんはお寺の生まれということもあり、仏教を熱心に勉強しているなかで、プログラミングとの共通点に気づいたそうです。それは、抽象的な宣言と具体的な実装とに分離可能な体系になっているということです。

 

例えば、仏教の「劫(kalpa)」という概念。これは、無限に近いほど長い時間を意味するのだそうですが、それを実際に何年と定義するかは仏教の流派(?)によって大きく異なるそうです。プログラミングもそれと同じように、抽象的な要件と具体的な実装はつながっているようで本質的に切れていて、ある種の「決め」がその2つをつなぐ役割を果たしています。ここに仏教とプログラミングの相同性を見ているというお話で、藤崎さんの独特のリズムも相まってとても楽しかったです。ちょっとフリースタイルぽくてかっこよかったです。

 
抽象的な時間

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KitchHikeの理念と実装

で、藤崎さんの話はそこから少しずれていって、KitchHikeという具体的なサービスの話になります。藤崎さんは言います。「KitchHikeの実装の一つがKitchHikeだ」と。これは、KitchHikeは一つの具体的なサービスである以前に一つの抽象的な理念であり、今提供している具体的なサービス以外にも様々な形を取りうる、という意味だと思います。

 

KitchHikeの理念を自分なりに勝手に解釈すると、他人と食卓を共にすることによって、「ただ食べる」を越えた「楽しくて豊かな食事」という体験ができるのではないか、ひいてはそうした体験を通じて、社会のミクロなレベルから異なる人間同士のいざこざや無理解を乗り越えることができるのではないか、ということなのかなと思っています。振り返れば、古代ギリシアにおいてすでに人は「生きる(zoe)」ことと「よく生きる(bios)」ことの区別に考えを凝らし、そのうえで「よく生きる」ためにはどうすればよいのかと考えてきました。

 

「食べる」ということは、人間が動物である限り避けては通れない行為です。動物としての生を維持するための「食べる」ではない、人間としての「よく食べる」ということ、そういうことは果たして思考できるだろうか。そして、それが思考できるとして、それは今の時代にどのように「実装」可能だろうか。KitchHikeが取り組んでいる、もっと言えば突きつけている問いはこういうことなのかもしれないなと思います。

 
ボリビアでKitchHike

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 「メッセージで社会は変えられない」 

前後関係を忘れてしまったのですが、山本さんがKitchHikeを始めた理由を話してくれました。「メッセージで社会は変えられない。歌や絵が社会を直接変えることはない。社会を変えるのは仕組みだ。歌を聞いた誰かが仕組みを変えて社会が変わることはあるかもしれないけれど。」これは藤崎さんの抽象と具体、理念と実装という言葉を変奏している、同じことを山本さんっぽく言い換えていると思いました。

 

この「仕組み」って何だろうということをもう少し考えてみたい、山本さんの話を聞いてそう思いました。そしてそのとき思い出したのが「法/規範/市場/アーキテクチャ」という、ローレンス・レッシグによる人間行動を制約する要素についての整理です。この整理をよしとするかどうかは別として、私たち一人一人の行動はこれらの異なる要素によって日々制約を受け、その制約が変わることによって、変化していきます。

 

だから、一人一人の行動を変える、それを積み重ねて「社会を変える」ということを具体的に、「実装的に」考えると、こうした様々な制約要素を変えていけばいいのです。「法」を変える、インフォーマルなルールたる「規範」を変える、「市場」で提供するサービスやその価格を変える、都市空間やインターネット空間の物理的な設計=「アーキテクチャ」を変える。その指針となるのが理念であり、具体的な方法が実装ではないでしょうか。

 

イベントの様子 (於:スマートニュース)

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こんなことを考えさせてくれる底の深いサービスがKitchHikeです。そして、こんなことをピザを食べながら話したり考えたりできるのがPizzaXというイベントです。参加者全員が同じことを筋道立てて理解する必要はないし、イベントで流れる言葉の端々からそれぞれが思考を広げていければいいと思います。そして、そこから次なる理念、次なる実装の種が生まれてくることを願っています。次回は10/2に開催予定です。

 

KitchHikeについてはもう一つ書きたいテーマがあるので、それは次回に回したいと思います。ざっくりいうとお金とコミュニケーションについて書いてみたいと思います。それではまた次回。