HIROKIM BLOG / 望月優大の日記

見えているものを見えるようにする。

全訳:ドナルド・トランプ「厳格な審査に関する最近の大統領令についての声明」

トランプ大統領がつい先ほど1/29 18:16(日本時間1/30 8:16)にFacebookで出した声明を全訳した。Donald J. Trump - Statement Regarding Recent Executive... | Facebook

この記事の内容は以下の通り。

  • 全訳:「厳格な審査に関する最近の大統領令についての声明」
  • トランプの政策はオバマのそれと本当に似ているのか
  • トランプの声明はBreitbartの記事を元にしている可能性がある
  • 声明直前のツイート

全訳:「厳格な審査に関する最近の大統領令についての声明」

「厳格な審査に関する最近の大統領令についての声明」

Statement Regarding Recent Executive Order Concerning Extreme Vetting

アメリカは移民たちの誇り高き国であり、私たちは抑圧から逃れてくる人々に対する同情を示し続ける。しかし、私たちはそれを私たち自身の市民と国境を守りながら行わなければならないのだ。アメリカはこれまでいつも自由の地であり、勇者たちの故郷であり続けてきた。

America is a proud nation of immigrants and we will continue to show compassion to those fleeing oppression, but we will do so while protecting our own citizens and border. America has always been the land of the free and home of the brave.

私たちはアメリカを自由で安全なものに保ち続ける。メディアはそれを知っているが、それを言うことを拒否している。私たちの政策はオバマ大統領が2011年に行ったものと似ている。つまり、彼がイラクからの難民に対するビザの発給を6ヶ月に渡って停止した政策と似ているということだ。大統領令で名指されている7カ国はオバマ政権時代に悪の源泉と名指されている国々と同じである。明確にしておくが、これはムスリム禁止令(Muslim ban)ではない。メディアの報道は誤っている。

We will keep it free and keep it safe, as the media knows, but refuses to say. My policy is similar to what President Obama did in 2011 when he banned visas for refugees from Iraq for six months. The seven countries named in the Executive Order are the same countries previously identified by the Obama administration as sources of terror. To be clear, this is not a Muslim ban, as the media is falsely reporting.

これは宗教に関することではない。テロ、そして私たちの国を安全に保つことに関することである。世界にはこの大統領令の影響を受けない40以上ものイスラム教国がある。私たちは次の90日間に現在の制度を見直し、最も安全な方法を実施できたあかつきいは、全ての国々に対してビザの発給を再開する。

This is not about religion - this is about terror and keeping our country safe. There are over 40 different countries worldwide that are majority Muslim that are not affected by this order. We will again be issuing visas to all countries once we are sure we have reviewed and implemented the most secure policies over the next 90 days.

私はシリアにおける恐ろしい人道危機に巻き込まれた人々に対してとても強い感情を持っている。私の第一の優先順位はつねに私たちの国を守り奉仕することであるが、しかし大統領として、苦しんでいるそれら全ての人々を助ける方法を見つけるつもりである。

I have tremendous feeling for the people involved in this horrific humanitarian crisis in Syria. My first priority will always be to protect and serve our country, but as President I will find ways to help all those who are suffering.

トランプの政策はオバマのそれと本当に似ているのか

トランプ大統領の反撃であり、検証が必要な争点の一つに「私たちの政策はオバマ大統領が2011年に行ったものと似ている」という主張がある。これについて、ワシントンポストが早速事実関係を調査していたので紹介する

Trump’s facile claim that his refugee policy is similar to Obama’s in 2011 - The Washington Post

ワシントンポストによると違いは以下3点にまとめられる。

  1. オバマの政策の背景には、イラクから米国に入国した2人の難民がイラクにいたころに爆弾をつくっていた事実が明らかになり、ケンタッキー州で逮捕されたという出来事があった。こうした明白な脅威があった当時と異なり、トランプの政策には明確な理由づけがない。
  2. ビザの発給がかなり遅くなっているという報道はあったもの、オバマ自身によるビザの発給停止についての表明はなかった。
  3. オバマの政策はグリーンカード保有者までをも対象とする包括的なものではなかった。

トランプの声明はBreitbartの記事を元にしている可能性がある

少し驚いたのだが、トランプの声明がFacebookでアップされるより数時間前に、alt-right系媒体のBreitbartが同趣旨の記事をアップしていた。なお、トランプ政権の首席戦略官スティーブ・バノンは政権参画前にBreitbartの会長を勤めていた。

FLASHBACK: Obama Suspended Iraq Refugee Program for Six Months Over Terrorism Fears in 2011 - Breitbart

実際に記事がアップされた時間がわからないのだが、twitterで検索してみると、トランプ大統領の声明より前にアップされていたのは間違いないことがわかる。

声明直前のツイート

トランプ大統領はこの声明を出す前にこの問題に関連して以下2つのツイートをしている。

 中東のキリスト教たちが多数処刑されてきた。私たちはこの恐怖が続くことを許すことはできない!

私たちの国は強い国境と厳格な審査を必要としている。今だ。ヨーロッパ全土、そして実際には世界中で起きていることを見てほしい。恐ろしい混乱だ!

また、ニューヨークタイムズやワシントンポストをフェイクニュースと罵るようなツイートも投稿している。

関連過去エントリ

プロフィール

望月優大(もちづきひろき) 

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慶應義塾大学法学部政治学科、東京大学大学院総合文化研究科修士課程修了(ミシェル・フーコーの統治性論/新自由主義論)。経済産業省、Googleなどを経て、現在はIT企業でNPO支援等を担当。関心領域は社会問題、社会政策、政治文化、民主主義など。趣味はカレー、ヒップホップ、山登り。1985年埼玉県生まれ。
Twitter @hirokim21
Facebook hiroki.mochizuki

難民受け入れ等に関するトランプ米大統領令「米国への外国人テロリストの入国から国民を保護する」について

1/27日金曜日に署名された米大統領令について情報を整理しておきたい。トランプ大統領の就任以降、毎日のように大統領令が出されているが、その一つについてである。

シリア難民の受け入れ停止やシリアを始めとする7カ国の人々に対するビザの発給停止など様々な措置を含むこの大統領令には “Protecting the Nation From Foreign Terrorist Entry Into the United States.” というタイトルがついている。日本語にすると「米国への外国人テロリストの入国から国民を保護する」となる。

大統領令の英語全文がNew York Timesにアップされている。大統領令の日本語全訳はまだ目にしていない。

この大統領令にはINA (Immigration and Nationality Act ; 移民国籍法) やU.S.C. (United States Code ; 合衆国法典) への参照が多数あり、大統領令だけを読んですべてがわかるわけではない。各種記事などを読みながら今のところわかっている情報を整理した。

大きく分けると、①難民受け入れに関する措置と、②「特定の懸念がある」7カ国の国民の入国に関する措置のそれぞれについて書かれている。本当はそれ以外にもいろいろと書いてあるのだが、特に議論を呼んでいるこの2点について情報をまとめておく(関心がある方は大統領令の本文に当たってください)。また、最後に大統領令のあとに起きている出来事についても簡単に触れている。

①難民受け入れについて

大統領令のセクション5に書いてある。

Sec. 5. Realignment of the U.S. Refugee Admissions Program for Fiscal Year 2017.(会計年度2017年における米国難民認定プログラムの再編成)

まず、会計年度の2017年は、2016年10月から2017年の9月までの12ヶ月間である。なので、今のことである。1/27に大統領令が出されてからすぐに実効化されている。

以下のことが書いてある。まず、米国難民認定プログラムを120日間停止する、ということが書いてある。これは、あらゆる国からの難民受け入れを1/27から120日間停止するということである。

The Secretary of State shall suspend the U.S. Refugee Admissions Program (USRAP) for 120 days.

次に、上記の措置を前提としたうえで、シリア難民についてはさらに以下のことが書いてある。要約すると、シリア難民の入国は米国の利益にとって有害だから、私がその判断を変えるまでは(無期限に)受け入れを停止する、ということである。

I hereby proclaim that the entry of nationals of Syria as refugees is detrimental to the interests of the United States and thus suspend any such entry until such time as I have determined that sufficient changes have been made to the USRAP to ensure that admission of Syrian refugees is consistent with the national interest.

さらに、会計年度2017年の難民受け入れ総数についても言及がある。端的に言うと会計年度2017年は難民受け入れの上限を5万人とする、ということが書いてある。

I hereby proclaim that the entry of more than 50,000 refugees in fiscal year 2017 would be detrimental to the interests of the United States, and thus suspend any such entry until such time as I determine that additional admissions would be in the national interest.

5万人というのがどういう意味を持つかというと、昨年9月にオバマ大統領が11万人受け入れると宣言した人数の半分以下になっている、という意味合いがある。

米国は2013~15年にかけて年間7万人の難民を受け入れてきた。16年にはその数を8万5000人に拡大。17年の11万人受け入れが実現すれば、米国に入国する難民は15年から57%増加することになる。オバマ政権は従来、厳しい状況に置かれた難民のため、すべての国々が支援を強化するべきだとの立場をとっている。
CNN.co.jp : 米政府、17年に難民11万人受け入れ 15年から57%増

最後に、難民受け入れの停止期間中における例外的な取り扱いの可能性についても言及がある。具体的には、出身国内で宗教的少数派である場合や、既存の国際規約に従う場合、すでに米国に向けて渡航しており入国を拒否することが過度の困難をもたらす場合などにおいて、彼らを難民認定することが米国に対するリスクとならない場合にかぎり、入国を許可することもケースバイケースではありえる、ということが書いてある。

the Secretaries of State and Homeland Security may jointly determine to admit individuals to the United States as refugees on a case-by-case basis, in their discretion, but only so long as they determine that the admission of such individuals as refugees is in the national interest — including when the person is a religious minority in his country of nationality facing religious persecution, when admitting the person would enable the United States to conform its conduct to a preexisting international agreement, or when the person is already in transit and denying admission would cause undue hardship — and it would not pose a risk to the security or welfare of the United States.

難民受け入れについての内容を簡単にまとめると、

  • あらゆる国からの難民受け入れを120日間停止
  • シリア難民については受け入れを無期限に停止
  • 会計年度2017年の難民受け入れ総数を5万人に制限(オバマ大統領は11万人と言っていた)
  • 120日間の停止期間中、ケースバイケースで難民受け入れを行う可能性がないわけではない

②「特定の懸念がある」7カ国の国民の入国について

大統領令のセクション3に書いてある。こちらは難民に限らず特定の7カ国の国民による米国への入国に関する内容となっている。

Sec. 3. Suspension of Issuance of Visas and Other Immigration Benefits to Nationals of Countries of Particular Concern.(特定の懸念がある国の国民に対するビザの発給及びその他の移住に関する利益の停止)

各種報道にもある通り、「特定の懸念がある国」は以下の7カ国である。

  • シリア
  • イラク
  • イラン
  • イエメン
  • ソマリア
  • スーダン
  • リビア 

大統領令に書かれていることは、これら7カ国からの外国人の入国が米国の利益に対して有害である可能性があり、したがって今後90日間にわたって、移民であろうとそうでなかろうと、当該7カ国の国民は米国への入国を拒否される、ということである。移住を希望しているかただの観光目的かにかかわらず、入国自体が拒否されるということだ。

I hereby proclaim that the immigrant and nonimmigrant entry into the United States of aliens from countries referred to in section 217(a)(12) of the INA, 8 U.S.C. 1187(a)(12), would be detrimental to the interests of the United States, and I hereby suspend entry into the United States, as immigrants and nonimmigrants, of such persons for 90 days from the date of this order (excluding those foreign nationals traveling on diplomatic visas, North Atlantic Treaty Organization visas, C-2 visas for travel to the United Nations, and G-1, G-2, G-3, and G-4 visas)."

この文章が行政の現場においてより具体的にどのような形で執行されるかということが混乱を呼んでいるようだ。ワシントンポストの記事では、いわゆるグリーンカード(永住権)保持者であっても、当該7カ国の国籍を持ちかつ大統領令が出たタイミングで外国にいた者は、そのあと米国に帰国しようとする場合には入国を拒否されると政府職員が認めた、と報道されている。

また、当該7カ国との二重国籍者や、当該7カ国で生まれたあとに英国のような同盟国のパスポートを持つに至ったものも、同様に扱われるとのことである。(ここでの「二重国籍者」に米国との二重国籍者が含まれるかどうかは文章からは読み取れなかった。)

But as the day progressed, administration officials confirmed that the sweeping order also targeted U.S. legal residents from the named countries — green-card holders — who were abroad when it was signed. Also subject to being barred entry into the United States are dual nationals, or people born in one of the seven countries who hold passports even from U.S. allies, such as the United Kingdom. 

ちなみに、BBCの報道では、グリーンカード保有者の扱いは不透明だとされている。

It is unclear how the order will affect citizens with legal permanent residency - people with so-called green cards. Rights groups have advised people to consult immigration lawyers before travelling outside the US or trying to return

当該7カ国の国民の入国についての措置について簡単にまとめると

  • シリア、イラク、イラン、イエメン、ソマリア、スーダン、リビアの国民は、90日間、米国への入国を拒否する
  • 米国のグリーンカード保有者の扱いは不透明だが、グリーンカード保有者であっても、当該7カ国の国民は入国を拒否されると行政職員が認めたという報道もある

大統領令のあとに起きたこと

大統領令にもとづき、実際に多くの人々が米国の空港で拘束されたり、外国の空港で米国行きの飛行機への搭乗を拒否されたりということが始まっている。

ニューヨークのJFK国際空港では、1/28土曜日に11人が拘束された。これを見て多くの人々が空港に集まり「Let Them In」と声を上げた。

この動きと並行して、ACLU(アメリカ自由人権協会)所属の弁護士らがニューヨーク等の連邦裁判所に対して救済を申し立てていた。連邦裁判所は、米国全土において、大統領令を理由に拘束されている人々が出身国に強制送還されることによって回復不可能な損害が出てしまう可能性を認め、この申し立てを認めた。

まとめ

①難民受け入れについて

  • あらゆる国からの難民受け入れを120日間停止
  • シリア難民については受け入れを無期限に停止
  • 会計年度2017年の難民受け入れ総数を5万人に制限(オバマ大統領は11万人と言っていた)
  • 120日間の停止期間中、ケースバイケースで難民受け入れを行う可能性がないわけではない
②「特定の懸念がある」7カ国の国民の入国について
  • シリア、イラク、イラン、イエメン、ソマリア、スーダン、リビアの国民は、90日間、米国への入国を拒否する
  • 米国のグリーンカード保有者の扱いは不透明だが、グリーンカード保有者であっても、当該7カ国の国民は入国を拒否されると行政職員が認めたという報道もある
1/28土曜日に、連邦裁判所は、米国全土において、大統領令を理由に米国から強制送還されようとしている人々の救済を認めた。今後この大統領令がどのような形で運用されていくのかは不透明である。

(1/30追記)

本件についてのトランプ大統領による声明を全訳しました。

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望月優大(もちづきひろき) 

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慶應義塾大学法学部政治学科、東京大学大学院総合文化研究科修士課程修了(ミシェル・フーコーの統治性論/新自由主義論)。経済産業省、Googleなどを経て、現在はIT企業でNPO支援等を担当。関心領域は社会問題、社会政策、政治文化、民主主義など。趣味はカレー、ヒップホップ、山登り。1985年埼玉県生まれ。
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関連過去エントリ

「本当に困っているのは誰か?」と問う正義。大西連さんと「保護なめんな」ジャンパー問題について話したこと。

1/17に小田原市の「保護なめんなジャンパー」問題が発覚してから1週間。このテーマについてもやいの大西連さんと話したいと思い、一昨日の晩にお会いしてFacebook Liveで1時間半ほど話しました。

大西さんはNPO法人もやいの代表で、名著『すぐそばにある「貧困」』の著者でもあります。今回の件についてとてもよくまとまった記事も書かれています。

そして、実際のFacebook Liveのリンクがこちらです。ちなみに彼とのLiveは2回目で、1回目のリンクはこちらです。

f:id:hirokim21:20170125112758p:plain

会話のなかでいくつか印象に残っているポイントをメモしておきます(順不同)。ジャンパー問題だけではなく、その周囲にあるいろいろな論点について話しました。

  • 生活保護のソーシャルワーカーという仕事とその現状
  • 生活保護の「不正受給」についての現状
  • 1946年制定の旧生活保護法に入っていた3つの除外規定(怠惰・素行不良・親族が扶養可能であること)
  • 生活保護批判(バッシング)と今回の行政批判との位置関係
  • 批判されているのは不正受給なのか、それとも生活保護なのか
  • 生活保護受給者への視線と犯罪者への視線
  • 尊重されるべき「普遍的価値」と、現状の経済・財政や自らの体験を背景にした「国民感情」のミスマッチ(異なる「正義」のすれ違い)
  • そのなかで「本当に困っているのは誰か?」という問い(≒疑い)が常に呼び出されてしまう構造(生活保護だけでなく、医療費や年金を含めたあらゆる社会支出との関係で呼び出されてきた)

これ以外にも基礎的なところからいろいろなことを話したので、興味のある方はぜひ見てみてください。自分自身、こうした会話を積み重ねることで少しずつ考えを深めていきたいと思っています。改めて動画のリンクはこちら

大西さんとはこれからもいろいろとお話していきたいなと思っているので、関心ある方は引き続きチェックいただければ幸いです。 大西さんの著書や柏木ハルコさんの漫画もオススメです。関連するテーマについては私もこのブログでいろいろと書いてきているので、そちらもぜひ。

参考文献

関連過去エントリ

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大人になったら。大人になっても。

今日は成人の日ですね。子どもが大人に変わる通過点。大人になったら何が変わりますかね。何が変わったかな。少し、考えてみました。

大人になったら学校に行かない。

大人の特徴のひとつは学校に行かないということですよね。当たり前だけど、大きな違いです。

私は24歳まで学校にいました。そのあとこれまで何年か働いてきて、31歳になって、そのことに気づきました。最近のことです。ああ、大人は学校に行かない。

学校って何だったでしょうか。学校にはテストがありますね。これが大きいなあと思います。成績が悪いと怒られたり進級できなかったりする。だからみんな勉強します、大なり小なり。

大人になったらそういうことはありません。もちろん、勤め先の仕事内容に関わるものはあるかもしれない。xxの資格を取りなさい、とか。

でも、それ以外のことは誰も教えてくれません。誰もテストを出してくれないし、誰も自分を評価してくれない。お前はバカだとか、もっとしっかり考えろとか言われることがなくなります。

誰からも。仕事以外のことについては。

私は学校に毎日きちんと通うのが得意ではないほうだったので、大人になって学校がなくなることは嬉しいことだと思っていました。でも、大人になって、学校時代よりも長い時間仕事をする生活に慣れてきたころ、言い知れない不安に襲われました。

世の中のことがさっぱりわからない。

学校で学んできたことはどんどん忘れてしまうし、日々のニュースをきちんと追いかける時間も気力もない。いまどんな本を読むべきか、誰も教えてくれない。

知っていることが全くアップデートされていないのに、知っているべきことはどんどん増えて行くように感じました。

このままでいいんだろうか。大人にも学校があればいいのに。テストがあるからと仕方なく新しい知識を詰め込めればいいのに、なんて妄想をしていました。

大人にも学校があればいいのに。でも、そんなものは今のところなさそうです。

大人になったら選挙で投票できる。

大人になったら、選挙で投票できるようになります。去年20歳から18歳に変わったので、成人の日がいう「成人」のタイミングとは少しずれてしまいましたが。

子どもは学校でいろいろなことを勉強して、勉強し終わったころに一人前の大人になって、選挙で投票できるようになります。政治に参加できるようになります。そういう仕組みになっています。

でも、知らないことばかりです。教わっていないことばかりです。

そりゃそうですよね。教科書には過去のことが書いてある。これから起こることは自分で情報を集めて、整理して、自分の頭で考えないといけない。

大人には教科書がありません。対して、世の中にはいろいろな情報があります。日々大量に作られ続ける大量の情報があります。

だから、大人になったら「適度な警戒心」を持たないといけないと思います。頼んでもいないのにするすると入ってくる情報が良い情報とは限りません。わかりやすくて短い時間で消化できる情報が良い情報とは限りません。

何かを理解した、何かを知っている、そう思ったときが一番危ない。自分が知りうることは本当に少なく、だからこそいつだって間違えうる。できるなら間違えたくないけれど、もし間違えてしまったらなるべく早めに気づきたいものです。

でも、それがとても難しい。気づいたらいつの間にかカロリー高め、塩分高めの情報ばかり摂取して満足しています。たくさんの文字を読んだはずなのに、たくさんの動画を観たはずなのに、何も残っていない。日々そんなことの繰り返しです。 

大人になったら。大人になっても。

私がこれまで生きてきてわかったこと。特効薬はない、ということだけです。そして特効薬がないからこそ、特効薬がほしくなるんですね。でもそんなものはない。学び続けるしかない、少しずつ、打ちのめされそうになりながらも。

学び続けるのは大変です。時間もお金もかかります。精神的な負荷もかかります。わからないことに直面しますから。わからないことをわからないままに耐えなければいけない、考え続けなければいけないからです。

ただ、そのことに慣れていくしかないと思います。

これは自分に対する希望であり、これから大人になる子どもたちに対する希望でもあり、ほかの大人たちに対する希望でもあります。

学校がなくても、テストがなくても、新しいことをどんどん学び続けたいと思います。教科書に書いていなかったことが毎日起きます。現在進行形で。学び続けたいと思います。この社会から、世界から目をそらさずにいたいと思います。

会ったこともない人、文字でしか出会ったことのない人のことを想像する、もう死んでしまっているかもしれない誰かのことを、これから生まれてくるかもしれない誰かのことを想像し続けたいと思います。

本を読み、旅に出て、人と話して、考え続けたいと思います。

そのことを根気強く続けていきたいと思います。

ーーーーー

加えて、私としては、学校がなくても、テストがなくても、学び、考え続けるためのきっかけを提供し続けていけたらと思っています。大人が大人であり続けるためのきっかけを、小さくても作り続けていけたらと思っています。

ーーーーー

こちらもそんな場所のひとつ。学校ではないけれど、丁寧に準備しました。

1/13 「子どもに誰が・いつ・どう性を伝えるか」トークショー ~SmartNews ATLAS Program「社会の子ども」vol.2~ | Peatix

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すべての若者たちへ。ミシェル・オバマ最後のメッセージ。

ミシェル・オバマ大統領夫人の最後のスピーチがとても素晴らしかったので、その後半部分、若者たちへのメッセージの部分を翻訳してご紹介します。舞台は1/6にホワイトハウスで行われた全米スクールカウンセラー・オブ・ザ・イヤーの授賞式です。英語全文はこちらに。

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ここから翻訳です。いくつかの見出しは私がつけたものです。

生い立ちや社会的地位に関係なく、あなたには居場所がある

私がホワイトハウスでの時間を終えるにあたって、ファーストレディとしての最後の公式の談話を通じて、若者たちに贈る事ができるこれ以上のメッセージはありません。この部屋にいる、そしてこの動画を観ているすべての若者たちへ、この国はあなたに属していると知ってください。これまでの生い立ちや社会的な地位には関係なく、あなたたちすべてにです。あなたやあなたの両親が移民でも、あなたは誇るべきアメリカの伝統の一部だと知ってください。新しい文化、才能、アイデアの流入、どの世代においても、それこそが私たちを地球上で最も素晴らしい国に作り上げてきたものです。

もしあなたの家族が多くのお金を持っていなくても、この国では私や私の夫を含む多くの人々がとても少ないお金とともに出発したということを忘れないでください。よく働き、良い教育を受けさえすれば、なんでも可能です。大統領になることだってできるのです。それがアメリカンドリームというものです。

あなたが信仰の人であったなら、宗教の多様性がアメリカの偉大な伝統であることも知ってください。実際それこそが最初の人々がこの国に来た理由だったのです。自由に信じるために。あなたがイスラム教徒であろうと、キリスト教徒、ユダヤ教徒、ヒンドゥー教徒、シーク教徒であろうと、これらの宗教は私たちの若者に対して正義と同情、そして正直さを教えています。だからこそ若者たちには誇りをもってそれらの価値を学び実践し続けてほしい。私たちの栄誉ある多様性、すなわち信仰、肌の色、信条の多様性、それは私たちが私たちであることに対しての脅威ではありません。それこそが私たちを私たちたらしめているものなのです。若者たちへ、他人が何と言おうとあなたという存在が大切でないなどと思ってはいけません。私たちのアメリカという物語に居場所がないなどと思ってはいけません。なぜならあなたは大切だからです。居場所があるからです。そして、あなたはあなた自身である権利を持っているのです。

権利と自由は毎日毎日獲得し続けなければならない

ただ、このこともはっきり言っておきます。この権利はただあなたに手渡されているわけではない。違います。この権利は毎日毎日獲得し続けなければならないものなのです。自由を当然のものと思ってはいけません。あなたの前の世代と同じように、あなたも自由を守るための自分たちの役割を果たさなければいけません。そして、それはまさに今、あなたが若いうちから始まるのです。

いまこの瞬間から、あなたは自分自身の声をこの国全体の議論に加えるための準備を始めなければいけないのです。あなたは市民として知識をもち関与できるように準備をしなければいけません。私たちの誇るべきアメリカ的な価値のために奉仕し、導き、そして立ち上がるために。日々の暮らしのなかでそれらの価値を大切にするために。それは、可能なかぎり最高の教育を受けることが、あなたが批判的に思考することを可能にし、自分自身を明確に表明することを可能にし、そして良い仕事を得て自分自身と家族を支えることを可能にし、コミュニティのなかのポジティブな力であることを可能にするということなのです。

あなたがこれから何かの障害に直面したらーー保証します。必ず直面します。あなたたちの多くがすでに直面しているようにーーもし困難に直面して、あきらめることを考え始めたら、私の夫や私が話してきたことを思い出してほしい。私たちがほとんど10年も前にこの旅路を始めたころから話してきたことを。このホワイトハウスのなかで、そして私たちの人生のすべての瞬間において私たちを動かしてきたものを。それは希望の力です。あなたがそのために働き、戦うつもりがあるのならば、より良いことはいつだって可能であるという信念です。

希望の力、どんな若者に対してもあきらめない

希望の力に対する私たちの根本的な信念が疑いや分断の声を乗り越えることを可能にしてきました。私たちが自らの人生やこの国の一生において直面してきた怒りや恐怖の声を乗り越えることを可能にしてきたのです。私たちの希望は、他者が私たちに課すどんな制限があっても、私たちが十分に働き、私たち自身を信頼すれば、私たちは私たちが夢見るどんなものにもなれるということです。それは、人々が私たちが真実にそうであるところを見るときには、おそらく、ただおそらくですが、彼らも自らありうる最高の自分自身に変わっていこうとするだろうという希望なのです。

これこそがカイラ(※)のように自分自身の可能性を探求し、それを世界と共有しようと戦う生徒たちの希望です。それこそがテリ(※)のようなスクールカウンセラーたち、生徒たちのあらゆる一歩を導き、どんな若者に対してもあきらめようとしない、ここにいるすべての人たちの希望なのです。そして、私の父のような人々の希望、市の水処理施設で毎日働き、いつか自分の子供たちが大学に行き、彼自身は夢にさえ見なかったような機会を手にすることへの希望なのです。(※テリは全米スクールカウンセラーオブザイヤーの受賞者、カイラはその教え子)

それは私たちすべてが、政治家であれ、親であれ、牧師であれ、私たちのすべてが若者たちに与えなければいけない希望なのです。それこそが毎日この国を前進させているもの、未来に対する私たちの希望とその希望によって鼓舞される大変な仕事だからです。

恐れずに、教育の力で、あなたの無限の可能性に価する国をつくってほしい

これがファーストレディとしての若者たちへの最後のメッセージです。シンプルです。私は私たちの若者に彼らが大切な存在だと知ってほしい。居場所があるということを知ってほしい。だから恐れないで。若者たち、私の声が聴こえる?恐れないで。フォーカスすること、ブレないこと、希望を捨てないこと、力を備えること(Be focused. Be determined. Be hopeful. Be empowered.)。良い教育であなた自身に力を備えてほしい。そしてそこから飛び出して、その教育の力を使って、あなたの無限の可能性に価する国をつくってほしい。希望をもった見本になってください。決して恐怖ではなく。そして、私はあなたとともにいます、私の残りの人生をかけてあなたを応援し、あなたを支えるために働きます、そのことを知っていてください。

そして、ここにいるすべての人々が、この国のすべての教育者たち、支持者たちが、日々心を尽くして私たちの若者たちを引き上げるために働いているということを私は知っています。私はあなたたちすべての情熱と次世代のための大変な仕事に対する献身に感謝します。そして、私はファーストレディとしての私の時間を終えるのに、あなたたちとともに祝福する以上の機会を考えることはできません。

だから、シンプルにありがとうと言って今日の話を終わりたいと思います。私たちの子どもたち、そしてこの国のためにあなたたちがしてくれるすべてのことに対して。あなたたちのファーストレディであることは私の人生で最も偉大な栄誉でした。私も、あなたたちにとっての誇りであれたらと願っています。

(※翻訳箇所は13:00ごろから最後までの部分です。"And as I end my time in the White House..."から。ぜひ動画も見ていただけたらと思います。)

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赤ちゃん縁組について知っておいてほしいこと

今朝こんなニュースが出ていました。

インターネット上でのかんたんな手続きで、赤ちゃんとの特別養子縁組を仲介するNPO法人がある。大阪市浪速区の「全国おやこ福祉支援センター」。効率化で「人工中絶や虐待から救える命がある」と訴えるが、「命を商品化している」と批判の声も上がる。

赤ちゃん縁組(特別養子縁組)については良く知らない方も多いと思うので、知っておいてほしい基礎的な知識と経緯についてだけ簡単にまとめました。

報道ではネガティブな側面に光が当たりがちですが、そうした側面についてはしっかりと法制度を整えることで改善する動きが進んでいます。そして、赤ちゃん縁組それ自体については、とてもポジティブで大きな可能性があるということを多くの方に知っていただけたらと思います。

以下3点にまとめています。ここだけでも読んでいただけたら嬉しいです。

  1. 赤ちゃん縁組のメリット
    理想的な状態で実施される赤ちゃん縁組(特別養子縁組)は、赤ちゃん(子ども)、生みの親、養親の3者それぞれにとって大きなメリットをもたらす。
  2. 赤ちゃん縁組を取り巻く現状の問題点
    赤ちゃん縁組は行政(児童相談所)と民間のあっせん事業者によって行なわれているが、後者については許可制ではなく、申請制になっている。そのため、業者の質にばらつきがあり、その点が問題視されている。ただし、現状でも良質な支援をしている民間事業者は一定数存在する。
  3. 赤ちゃん縁組のこれから
    12/9に成立した特別養子縁組あっせん法案は、こうした現状を改善するために、民間のあっせん事業者を許可制に変更し、国として民間事業者の質をしっかり担保していく方向に動き始めている。

それぞれについて一つずつ短く書いていきます。 

1. 赤ちゃん縁組のメリット

理想的な状態で実施される赤ちゃん縁組(特別養子縁組)は、赤ちゃん(子ども)、生みの親、養親の3者のそれぞれにとって大きなメリットをもたらす。 

特別養子縁組という制度は0歳から6歳未満の子どもについて、生みの親との親子関係を終了させ、育ての親との親子関係を開始するための制度です。これによって、主に望まない妊娠の結果産まれた子どもが、早い時期から家庭的な環境で育つことが可能になります。何はともあれ産まれてくる赤ちゃん、子どもの幸せのためにとても重要な仕組みなのです(虐待死の多くは0歳児に集中していることがよく知られています)。

そして、望まない妊娠をしてしまった生みの親、子どもがほしいけれど自分で出産することが難しい育ての親にとっても、特別養子縁組は大きなメリットがある制度です。しかし、あくまで丁寧な情報提供とカウンセリングが行われるという前提が守られていることが大切です。簡単に、スピーディーにマッチングをして済む話ではないというのは当然のことです。

2. 赤ちゃん縁組を取り巻く現状の問題点

赤ちゃん縁組は行政(児童相談所)と民間のあっせん事業者によって行なわれているが、後者については許可制ではなく、申請制になっている。そのため、業者の質にばらつきがあり、それが問題視されている。ただし、現状でも良質な支援をしている民間事業者は一定数存在する。

今朝の記事が取り上げていた大阪の団体については、これまでも繰り返し行政指導が行われ、メディアからも批判的に取り上げられてきた経緯があります。

また、今年の9月には、子どもが紹介される優先順位を上げるための費用と称して、東京都の夫婦から現金100万円を受け取っていた事業者が事業停止命令を受けるというケースも発生しました。養子あっせん団体に事業停止命令 優先紹介へ現金要求:朝日新聞デジタル

特別養子縁組をあっせんする民間団体が、優先して子どもを紹介する費用として東京都の夫婦から現金100万円をもらっていたことが分かった。事業の届け出を受けている千葉県は27日、社会福祉法で定める「不当な行為」にあたるとして団体に事業停止命令を出した。厚生労働省によると、養子あっせんの停止命令は全国初とみられる。

付言すると、縁組にかかる様々な費用それ自体を請求することには問題がありません。この事業者のように、ほかの夫婦より優先的に子どもを紹介するための費用を請求することに問題があるということです。ここは区別して理解することが必要です。

さて、問われるべきはそもそもなぜこうした問題のある事業者があっせん事業に参入できてしまっているのかということですが、その背景には民間のあっせん事業者が申請制で許可制ではないという現状の法制度上の不備があります。事業者の活動を規制し、その質を担保するための法制度がしっかり整っていないからこそ、様々な事業者が参入できてしまうという問題が発生しているわけです。

もちろん、こうした状況でも、思いを持って丁寧な情報提供と時間をかけたサポートを行う良質な事業者は存在します。私も、そうした事業者の一つである、認定NPO法人フローレンスの赤ちゃん縁組事業を支援するなかで、特別養子縁組を取り巻く正しい情報や経緯について学ぶ機会を得ることができました。ぜひこうした知識が社会のなかで少しずつ広がっていってほしいと願っています。

3. 赤ちゃん縁組のこれから

12/9に成立した特別養子縁組あっせん法案は、こうした現状を改善するために、民間のあっせん事業者を許可制に変更し、国として民間事業者の質をしっかり担保していく方向に動き始めている。

問題の根本にある法制度上の不備が解消される方向に進んでいることは素晴らしいことです。成立した新法の内容については、こちらの日経新聞の記事がわかりやすくまとまっていたので紹介します。養子縁組あっせん業を許可制に 新法成立 :日本経済新聞

「悪質業者の排除に向け、従来の届け出制から都道府県知事による許可制とした点が柱。無許可事業者には1年以下の懲役か100万円以下の罰金も設けた。2年以内に施行される。」

「新法は事業者の許可要件を(1)必要な財政基盤がある(2)営利目的ではない(3)実親・養親の個人情報を適切に管理できる――などと規定。社会福祉士の資格を持つ人などを責任者とするよう義務付けた。許可を得た事業者には国や自治体が財政支援できるようにした。」

「実親の出産費用などの実費は厚生労働省令で「手数料」と定め、養親らからの受け取りを認めるが、それ以外の報酬を得ることは禁止。養親希望者の選定、面会、養育に入る前の3段階にわたり実親側から同意を得るよう定め、家庭裁判所の審判を経た養子縁組の成立後も子供や養親、実親の支援をすることを努力義務とした」

「既に届け出をしている事業者も新たに行政の許可を得る必要があるが、施行から半年は経過措置期間とする。事業者は都道府県への事業報告書提出が求められ、行政は許可取り消しもできる。厚労省によると、昨年10月時点の届け出事業者は22だった。」

この法改正によって、いま存在している問題点がしっかり解決され、より多くの赤ちゃん、子どもたちが家庭的な環境で育っていける社会につながっていくことを願います。

特別養子縁組という制度が持つ可能性をしっかりと花開かせていくためにも、私たち自身が知るべき情報を知り、良いものとそうでないものを見分ける力をつけていくことが大切です。私も引き続き自分が学んだことを様々な形で発信していければと思います。

これから特別養子縁組についてもっと学びたいという方には、最近出版されたこちらの本をおすすめします。実際に特別養子縁組の制度を活用した人たちのストーリーや、特別養子縁組の仕組みの詳細について紹介されていて、とても勉強になります。

産まなくても、育てられます 不妊治療を超えて、特別養子縁組へ (健康ライブラリー)

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プロフィール

望月優大(もちづきひろき) 

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慶應義塾大学法学部政治学科、東京大学大学院総合文化研究科修士課程修了(ミシェル・フーコーの統治性論/新自由主義論)。経済産業省、Googleなどを経て、現在はIT企業でNPO支援等を担当。関心領域は社会問題、社会政策、政治文化、民主主義など。趣味はカレー、ヒップホップ、山登り。1985年埼玉県生まれ。
Twitter @hirokim21
Facebook hiroki.mochizuki

「ラストベルトの反乱」という神話。白人労働者たちがトランプに寝返ったというのは本当か。

Slateに「ラストベルトの反乱という神話」という記事があがっていました。面白い記事だったので内容を紹介します。著者は南カリフォルニア大学法学部の教授とヨーク大学博士課程の学生の二人です。

The myth of the Rust Belt revolt.

トランプが勝った理由、クリントンが負けた理由として、白人労働者階級の反乱が頻繁に語られました。すなわち現状に不満を抱える白人労働者たちによる民主党から共和党への寝返りが起きたのではないか、というストーリーです。

特に地理的には「ラストベルト rust belt」と呼ばれる、カナダに近い中西部から大西洋岸にわたって広がるかつての工業地帯でこうした反乱が集中的に起こり、それがトランプの勝利を帰結したのではないか、という考えが多く語られました。

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改めてアメリカの州名を眺めてみる

先の記事では、2012年と2016年の両大統領選挙における、アイオワ、ミシガン、オハイオ、ペンシルバニア、ウィスコンシンというラストベルト5州の出口調査と投票率のデータを活用し、この「ラストベルトの反乱」というストーリーの信憑性が検証されています。

著者の考えはシンプルなものです。

  • 2012年と比較して、民主党は年収10万ドル以下(特に5万ドル以下)の人々からの票を失った(155万票ほど)。
  • 人種・エスニシティという観点では、白人の95万票、黒人など白人以外(BIPOC)の40万票を失った。(※BIPOC = Black, Indigenous and Other People of Color)
  • では共和党がこの155万票を根こそぎ持っていたかというとそうではなく、2012年と比較して、年収10万ドル以下での共和党の得票数は36万票しか増えていない。
  • では残りの100万以上の票はどこに行ってしまったのか。
  • 一つには民主党でも共和党でもない「第三党」に行った。その数51万票。
  • もう一つの要因は棄権の増加である。50万増えている。
  • したがって著者はこう結論する。民主党に投票しなかった人々の多くは、トランプに投票するよりも第三党の候補に投票するか、そもそも誰にも投票しない傾向のほうが大きかった

著者が記事中で示したグラフは以下の2つです。

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年収別に見た各政党投票者数の増減(2012→2016年)

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人種別に見た各政党投票者数の増減(2012→2016年)

著者の分析は非常に興味深いと思います。というのも、これまで民主党支持者だった人たちが一気に共和党、あるいはトランプ支持者になったわけではなく、彼らの多くはクリントンにもトランプにも投票することができず、棄権するか第三党に投票したということを言っているからです。

ニューヨークタイムズの以下の図を見たことがある人も多いかもしれません。赤い矢印は2016年のトランプの得票数が、2012年のロムニーの得票数を上回った地域を示しています。同様に、青い矢印は2016のクリントンの得票数が2012年のオバマの得票数を上回った地域です。

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(New York Times - How Trump Reshaped the Election Map

一目見てわかる通り赤ばかりです。これは共和党候補への投票者数が増えたことを意味していますが、今回の分析が示唆することはそれよりももっと大きな変化が起きていたということです。それが、民主党支持者が民主党候補に投票せず、第三党に投票したり、そもそも棄権してしまった、という可能性でした。

したがって、著者たちが言うように「白人労働者たちが民主党から共和党に寝返った」というストーリーは一部正しいものの、より大きな変化を覆い隠してしまっている可能性があります

前回11/13にアメリカ大統領選について書いたこちらの記事(ドナルド・トランプの勝利と「新しい世界」について)でも、投票率が鍵になっている可能性を指摘していました。ただ、第三党への投票者が増えているだろう可能性については見過ごしていました。

最後に投票率です。これもCNNから数字が出ています。ただし、人種・エスニシティ別の投票率はまだ出ていないと思います。

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2008年と2016年の投票率を比較するとわかりやすいのですが、全体の投票率は63.7%から55.4%に8.3%下がっています。2008年の選挙の盛り上がりがよくわかる変化です。政党別に見ると、2008年から2016年にかけて特に民主党候補に対する投票率の低下が著しく、33.7%から26.5%へと7.2%も低下しています(共和党は2.8%の低下)。

もちろんこれだけでは、民主党の支持層がトランプに移ったのか単に投票に行かなかっただけなのかを判断することはできませんが、先に触れたオバマ時代(2008年、2012年)の黒人の投票率の高さを見ると、今回も彼らが同様の働きをしたかどうかは気になるところです。

いずれにせよ、今回の大統領選では、トランプ・共和党が勝ったという側面よりもクリントン・民主党が負けたという側面のほうが大きいことが明らかになってきているように思います。

逆に言えば、2008年、2012年についてはオバマだったからこそ民主党が勝てたという側面が大きいのではないでしょうか。

関連過去エントリ

プロフィール

望月優大(もちづきひろき) 

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慶應義塾大学法学部政治学科、東京大学大学院総合文化研究科修士課程修了(ミシェル・フーコーの統治性論/新自由主義論)。経済産業省、Googleなどを経て、現在はIT企業でNPO支援等を担当。関心領域は社会問題、社会政策、政治文化、民主主義など。趣味はカレー、ヒップホップ、山登り。1985年埼玉県生まれ。
Twitter @hirokim21
Facebook hiroki.mochizuki